
今月開かれる国内最大の吹奏楽の全国大会「第72回全日本吹奏楽コンクール」に、関係分で松本市の梓川、鎌田の両中学校吹奏楽部と、信州大吹奏楽団が出場する。それぞれ県大会(7、8月)と予選の東海大会(8、9月)で金賞を受け、中でも上位の代表に選ばれた。中学生の部(出場30校・団)は10月19日に宇都宮市、大学の部(同15団)は26日に札幌市で行う。
仲の良さが豊かな音に【梓川中】
部員は51人。妹尾圭子教諭が顧問に就いた6年前から掲げる「本音・本気・本物~梓吹(あずすい)サウンド届け!」をスローガンに、初出場を果たした昨年に続き2度目の全国大会。20校・団が競った東海大会で選ばれた代表3校のうち、今年は最高賞を受けて大舞台に臨む。
前年の3年生の引退後、指導を受けた複数の外部講師に「個々の技量はまだまだだが、全員の音が合わさった時のサウンドは良い」と講評・指摘されたという。部員同士や部員と顧問の「仲の良さ」も、味がある表情豊かなサウンドを生む一因だろう。一方、その後は基礎練習に力を入れ、チーム全体の底上げを図った。
自由曲は田村修平さん作曲の交響詩「祈りの陽」を演奏する。「生命力」や「希望」といったテーマを表現したシンフォニックな響きが特徴の曲で、部の持ち味でもある「良く鳴る、厚みのあるサウンド」が生かせる。課題曲は酒井格さん作曲「メルヘン」を選んだ。
大澤愛心(あみ)部長(3年)は「(銅賞だった)昨年の悔しさをばねに完全燃焼したい。お世話になった人たちへの感謝の気持ちを音に乗せ、笑顔で終わりたい」。もちろん好成績も─。昨年の経験を糧に、進化した梓吹サウンドで挑む。

高み目指し難曲に挑む【鎌田中】
「人の心に響いて残る音楽を」という目標を掲げ、顧問の塚田理恵教諭の下、部員55人が13回連続の東海大会を経て4年連続10度目の全国大会出場を果たした。
自由曲で演奏する「ブリュッセル・レクイエム」は、ベルギーの作曲家ベルト・アッペルモントさんが、2016年3月に起きたブリュッセル連続テロ事件の犠牲者を悼んで作った。悲しみと苦しみ、そこから新しい世界をつくろうと希望を持って立ち上がる人々の姿が、1曲を通じてグラデーションのように描かれる。
木管楽器の超絶技巧、金管楽器のグリッサンド(音程を滑らかに連続して変化させる奏法)、パーカッションの巧みな手さばきなど、中学生には難しい曲にあえて挑む。課題曲は近藤礼隆さん作曲「風がきらめくとき」を選択した。
代表に選ばれたものの、4年連続の最高賞を逃した東海大会の結果に悔しさはあった。しかし、改めて自分たちの演奏を見つめ直し、ギアが一段階上がったという。
幅瑚々音(ここね)部長(3年)は「高みを目指し、今のメンバーで演奏できる時間を大切に、最後まで気を抜かず全国の舞台に立ちたい」。今回新調したユニホームをまとい、新たな気持ちで大舞台に臨む。

息遣いを意識した練習【信州大】
135人いる団員のうち、コンクール出場メンバーは55人。2年次からキャンパスが分かれ、全員そろっての練習が難しい事情を乗り越え、12年ぶり2度目の全国大会出場を果たした。
団は「ブレスパイプ」という、塩化ビニール製のパイプに息を吹き込む特殊な練習法を取り入れている。息遣いを集中的に意識し、楽器より太い管に息を吹き込むトレーニングが、実際に楽器を吹いたときに音に良い変化をもたらしたという。
本番で演奏する自由曲は、米作曲家ジョン・マッキーさんの吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」。古代ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」の物語に基づく曲は「傲慢(ごうまん)」「儚(はかな)い永遠の糸」「魂の叫び」の3楽章から成り、荒々しさと美しさを併せ持つ難易度の高い曲として、多くの吹奏楽団によって演奏されている。課題曲は「メルヘン」。
瀬川茉奈団長(人文学部3年)は「賞にこだわるだけでなく、大会に出場できるよう支えてもらったことへの感謝を忘れず、コンクールに向けて頑張って良かったと思えるように演奏してきたい」。
聴く人の心に残る“名演”をと、この夏のすべてを練習に費やした学生たちの、集大成のステージが始まる。