安曇野の版画家・故隠岐安弘さん 作品の管理保存へ級友と実弟が会社

10月19日から企画展 作品見てほしい

2012年、56歳で亡くなった安曇野市明科東川手の版画家・隠岐安弘さん。明北小学校の同級生と実弟が4月、隠岐さんの作品を管理保存しようと合同会社「OKIグラビュール」を設立した。
作家として活動していた唯一の同級生だった。親族の「作品を何とかしたい」という思いを支えようと集まった。子どもの頃、一緒に野山を駆け回った仲間意識も強い。
これまでも明科や穂高で展示会を開くなどしてきた。だが、同級生たちは「組織をきちんとつくらなければ、作品がばらばらになってしまう」「継続して活動するには、有志の集まりでは難しい」と考えた。
10月19~27日、ギャラリーノイエ(松本市大手3)で作品展を開く。外部に向けての初仕事だ。

隠岐安弘を知っていますか?

「Dance Ⅳ」「イカロスの羽」「タイムマシーン」─。19~27日、ギャラリーノイエに展示する版画家・隠岐安弘さん(1955~2012年)の作品の一部だ。木、銅板、リノリウム(ゴム板)などを使った40点以上を展示する。同級生と実弟でつくる「OKIグラビュール」が多くの人に知ってもらいたいと企画した。タイトルはずばり「隠岐安弘を知っていますか?展」だ。
「OKIグラビュール」(安曇野市明科七貴)は、隠岐さんの作品を管理するために設立された合同会社。メンバーは小学校の同級生、小出博一郎さん(68、同)、赤羽利夫さん(68、同)、髙山淳夫さん(68、同)、鳥羽文彦さん(68、同東川手)、松枝功さん(68、同南陸郷)に、隠岐さんの実弟・好和さん(65、同七貴)を加えた6人がメンバーだ。
96年、小学校卒業後30年の同級会をきっかけに、作家活動をする隠岐さんや美術教師の鳥羽さんらで、明科駅前にあった施設で作品展を実施。12年に隠岐さんは急逝したが、13年には仲間で没後1年の展示会を明科支所で開催。市豊科近代美術館が16年に開いた「安曇野の作家展」で、作品の調査が行われたという。

残された作品へ仲間たちの思い

22年には小出さんらが集まり、穂高の碌山公園研成ホールで没後10年の作品展を実施。今年4月に合同会社を設立した。「本人は亡くなったが、仲間意識が強く、本人のために何かしたいと思った」「作家活動をしている人は同級生の中で唯一」といった思いが出発点だ。
作品を保管するしっかりした施設などがないことから、「このままではばらばらになってしまう。継続して活動するためにも組織が必要だった」と代表社員の小出さん。
現在、同社が確認している作品数は2700点以上。原板も少し残る。「色違いといったバリエーションもあり、まだまだ数え切れてない」という。今回の作品展は、メンバーが好きな作品を選んだ。「抽象的で個性的、独創的な作風。万人受けする物より、自分で表現したいことを版画を通して表したのではないか。見た物というよりは内面を描いている物が多い」と推測する。
「子どもの頃は絵や版画が好きだったという印象はない」と同級生は話す。松本工業高校卒業後、千代田デザイナー学院(東京都)で学んだといい、どうしてその道に進んだかは同級生は分からないという。大きな組織の歯車になりたくないといった思いから、養蜂業をしながら版画と向かい合った。「急逝、早世で隠岐さんの悔しさもあるからこそ、一人でも多くの人に紹介し、知ってもらえたら」とメンバーは口をそろえる。子どもの頃からの絆は今も強い。
午前10時~午後5時。入場無料。小出さんTEL090・4121・8882