ネイルボランティア小嶋みずきさん 「みんなに勇気を」自身の経験もとに

誰かのために時間を使いたい

「見て見て!キラキラでかわいいよ」
昨年、念願の福祉ネイルサロン「POKOMON。」を開業した松本市の小嶋みずきさん(30、梓川倭)。経営の傍ら、地域の福祉施設や特別支援学校で、希望者にボランティアでネイルを施す。子どもたちは自分の爪を見て大喜びだ。
生まれつき体が弱く、通院生活を続ける。「誰でもおしゃれを楽しんでいい。やりたいと思ったことはできる」。制限の多い生活だからこそ、似た境遇の人の気持ちが痛いほど分かる。「障がいのある人、病気の人に勇気を与えたい」
12日、松本ろう学校(寿豊丘)の文化祭でのボランティア活動は、行列ができる大人気。ネイルが初めての子、保護者に見せる子─。会場が笑顔であふれた。

病気でつらい時かけられた言葉

ネイルサロンを経営しながら、地域の福祉施設などで希望する子どもたちにボランティアでネイルを施している小嶋みずきさん。定期的に通院し、さまざまな病気と向き合いながら日々、活動する。「今を精いっぱい生きようと考えた時に、この時間を誰かのために使いたいと思った」。そんな思いが活動の原点だ。
小嶋さんは体が弱く、複数の病気の治療のため、小学校高学年から中学にかけては入院することも多く、学校を休みがちだった。勉強についていけなくなり、友達もなかなかできない。高校卒業時の就職活動では、病気が理由で何社も落ちた。「生きるのがつらい」と、心を痛めたことも多かった。
それでも今、活動ができているのは、就職活動での出来事が原点になっている。月に数回の通院があることなどを理由に、なかなか仕事が決まらない中で、関心のあったアパレル店を受けた。その時、店長が「病気なんか関係ない」と言葉をかけてくれた。認めてもらえた気がした。「自分も、誰かがつらいときに手を差し伸べられる人、温かい一言を言える人になりたい」と思った。この店に採用され、現在も勤めている。

好きなネイルで元気を与えたい

幼少期から歌うことが好きだった小嶋さんは高校時代に、日本舞踊を教える祖母と2人でユニット「おかめちゃん’S」を結成。26歳まで10年間、ボランティアとして福祉施設の利用者らに日本舞踊と歌を披露して好評だった。誰かが喜ぶ姿がうれしかった。
2020年になると、コロナ禍で福祉施設の訪問が難しくなった。外出できず悶々(もんもん)とする日々が続いた。そんな時、趣味でやっていたネイルに目を向けた。調べてみると、美容と福祉の二つの知識を兼ね備えた「福祉ネイリスト」という仕事があることを知った。
「自分が好きなネイルで何かできたら」と、コロナ禍の間にネイルスクール2校に通い、ネイリストと福祉ネイリストの資格を取得し、昨年開業。形は違えど、福祉施設でのボランティア活動も再開した。
祖母と活動してきた福祉施設などを再訪するため、過去の経験が今の人脈につながっている。ボランティア活動には「元気を与えたい」という思いで行くが、施術後に爪を見て喜んでくれる姿から「逆に元気をもらっています」とうれしそうに話す。
「今、やりたいことができて、幸せだと実感している」。病気の子や不登校の子の気持ちが分かるからこそ、自分の姿を通じて伝えたいことがある。「私は病気があったから出会えた人や活動がある。何かハンディがある人もやりたいことができる、希望が持てる社会にしていきたい」。そう語る表情は、希望に満ちている。
ネイル3800円~、キッズ1500円~。問い合わせはTEL090・9669・4696