
27年ぶり選手復帰必死に励む
母は強く、格好良かった─。安曇野市穂高の空手道場・公和館犀龍(さいりゅう)会道場所属の小林智代美さん(45、同市穂高有明)は、25~27日に群馬県高崎市で開く日本空手協会の第16回世界選手権大会の熟練者大会に出場する。
高校まで「必死に」空手に取り組み、全国高校総体で入賞歴もある。卒業後は「全くやらなかった」が、同じ空手で全国大会に出場するなど頑張るわが子に「母の頑張る姿も見せたい」と昨年、27年ぶりに選手復帰。出場した大会で世界大会の出場権を獲得した。
「体で覚えたものは忘れない」と同道場の鈴木尚登道場長(66)が言うように、輝きを取り戻しつつある小林さん。本番では「子どもたちのために」と、最も得意な形「五十四歩大」を演武する。
小1から始めて数々の実績残す
18日の夕方。小林智代美さんが所属する空手道場・公和館犀龍会道場で、稽古が始まった。この日は子どもたちに小林さんも交じった。鈴木尚登道場長の掛け声に合わせ、基本の動きや形を練習。小林さんの動きの切れとスピードは、子どもたちに見劣りせず、長年の稽古で培った迫力が感じられた。
小林さんは小学1年生の時に安曇野市穂高の町道場で空手を始めた。小学6年時に形で全国4位、中学1年時には形で全国1位、組手でも2位になるなど実力を付け、高校では松商学園高の空手部に所属。2年時に春の全国選抜大会の形で5位、3年時には全国総体の形で6位に入賞するなどの実績を残した。
高校卒業後は「燃え尽きた」と、空手から完全に離れた。
長男の昊誠(こうせい)さんが小学1年生になり、空手を始めた2018年、「ダイエットを兼ね、子どもと一緒にやろう」と、稽古を再開。やがて昊誠さんの下の双子のきょうだいで現在、ともに穂高北小4年で9歳の賢侑(けんゆう)さんと美侑歩(みゆほ)さんも始めた。賢侑さんは「兄ちゃんが格好良かったから」、美侑歩さんは「お母さんが格好良かったから」と、それぞれ始めたきっかけを話す。
子どもたちの頑張る姿を見て刺激を受けた小林さんは昨年9月ごろ、「母が本気で空手に取り組んでいる姿を見せたい」と、大会出場を決意。復帰第1戦に定めた第22回熟練者全国選手権大会(11月18日、東京)を約2カ月後に控えた時だ。
努力の成果実り復帰戦3位入賞
「復帰を決めてからは、高校生の時のように『必死』になった」と小林さん。賢侑さんと美侑歩さんも「お母さんの目の色が変わった」と母親の「本気度」に驚いた。
迎えた復帰戦。小林さんは40~44歳女子形の部に出場し、3位入賞。引き続き行われた世界大会の代表決定戦でも勝ち抜いた。
鈴木道場長は「競技志向の動きになっていたのを、空手本来の動きに修正した。体全体の力みが消え、下半身で動けるようになった」と、短期間での努力の成果を評価する。
こうした母の頑張りに双子も負けず、今年8月の小中学生全国選手権大会で、賢侑さんは小学4年生個人男子形の部で6位入賞、美侑歩さんも同女子形の部で32強に入った。
きょう25日に開幕する世界大会。小林さんは2日目の熟練者大会45~49歳女子形の部に出場予定だ。「順位など、あえて目標は口にしたくない」と小林さん。「子どもたちに格好良い姿を見せたいし、お世話になった先生たちに恩返しできるような演武をしたい」と、きっぱりと語った。