若手やベテラン政治に託す思い
コメ不足が騒がれた記憶も新たな中、農相経験者の新首相が政権の信を問うている。地域や将来を担う農業者は政治に何を期待しているのだろうか。
安曇野市豊科高家の中野幸太さん(18)は有権者になったばかりだ。来春、南安曇農業高校を卒業したら、家族で営む「アルプス農事」に専従する。「農業は楽しい。安心して経営できるようにほしい」と話す。
経営はかなり勉強している。今年の稲作は30ヘクタール。やはり売値が上がって助かったという。「経費が出る最低限のラインになった」。春に我慢したトラクターの買い替えもめどが付いたという。
もともとコスト意識は高く、高校では下水汚泥を肥料化する研究に取り組んできた。「今の米価が続いてくれればいい」と願う。
一方で、消費者の戸惑いも想像できる。「尋常じゃない値上げになっていると思う」
とはいえ、肥料など資材価格の高止まりは続きそう。若手に農地を任せたいという周りの期待も感じていて、人手不足の中でそれに応えるにはコンスタントな機械投資がいる。「申し訳ないけど、生産物が高くならないとやっていけない」
農家がつぶれず、消費者に過度な負担にならず。間に立って調整できるのは政治だけと託す気持ちがある。
「農業の『の』の字も出ない」と行政との懇談の場を振り返って嘆くのは、松本市町会連合会で副会長を務める小林弘也さん(78)。地元の中山地区では、農事組合法人でソバを栽培している。
すでに90ヘクタールを耕作するが、「もう作れない、なんとかならないか」という農地所有者の声は絶えない。状況はどこも同じだと、市農業委員会の会長を務めた経験から知っている。行政の関心の薄さがもどかしい理由だ。
「特産品のブランド作りに目を向けてほしい。国や県レベルで思い切ったことをやってくれれば」。政治に地域を引っ張り上げてほしい。