
人間の最大身長を意識280センチ超えも
安曇野市穂高の碌山美術館で12月8日まで、木彫を主とする彫刻家・森靖(おさむ)さん(41、東京都)の展覧会が開かれている。「ミロのビーナス」が溶けてマリリン・モンローになっていく様を彫った作品や、オーストリアで見つかった旧石器時代の「ヴィレンドルフのビーナス」をモチーフに、ふくよかな人間の美を表したものなど、280センチを超える高さの作品もある。
展覧会の副題は「GigantizationManifesto」で、「巨大化宣言」の意味だ。280センチ超えの作品は人間の最大身長を意識し、最長寿命といわれる120年と同じ樹齢のクスノキで彫った。
巨大な像は、世界的に古代から国家事業として作られてきたが、森さんは一人の作家の立場で「直彫り」を大切にしながら、大きな作品に挑戦する。木の塊から木取り、荒彫りなどの工程を丁寧に重ね、「内面を込めることで、量感やカタチに意味を見いだす」という。「未来の人に恥ずかしくない仕事をしたい」と、言葉に力を込める。
愛知県岡崎市生まれ。東京芸術大彫刻科から同大大学院に進んだ。大学生時代は近代美術を学び、院生時代には寺社建築の技術にも興味を持った。「現代アートをやろうとするほど技法が古典回帰し、木彫に手応えを感じた」という。
本展の担当者、碌山美術館学芸員の濱田卓二さんは、「基本を大切にする森さんの作品だからこそ、近代芸術を扱う碌山美術館に展示してほしかった。館が近代と現代の芸術の、架け橋になれれば」とコメントする。