
故郷で着物の魅力伝えて
日本の伝統衣装である着物をもっと身近に、気軽に着てほしい─。着物文化をつないでいきたいと、松本市の北野梨恵さん(52)が「キモノシナノヤ」の名で、今年から市内で活動を始めた。
市内出身の北野さんは、高校卒業後暮らした東京で、着物講座の開催、着物たんすの整理のアドバイス、予算と好みに合わせた着物の提案|など、着物の魅力を伝える「きものオーガナイザー」として、フリーランスで活動していた。
父親の介護もあり4年ほど前、約30年ぶりに故郷に戻った。北野さんがセレクトした着物や帯の初の展示会を、1~4日、市内のギャルリ灰月(かいげつ)(中央2)で開く。着やすく扱いやすいものを並べる。「着物はおしゃれで楽しい─を伝えたい」
キモノシナノヤ 北野梨恵さん 講座や提案など活動を本格化
かつて実家で一緒に暮らした祖父母が、毎日着物を着ていたという北野梨恵さん。着物は身近であり、いつか自分でも着られるようになりたいという憧れでもあった。
短大に進学して住んだ東京では、着物で働く会席料理店でアルバイトをしたり、着付け教室に通ったりした。卒業後、着物ブランドも手がける大手アパレル会社に就職し、販売や企画、生産管理を経験。別のアパレルに転職し、激務の合間をぬって休日は着物を着て楽しんだ。
「やっぱり着物に携わる仕事がしたい」と、約20年前、リサイクル着物店に転職した。アンティーク着物が好きだった北野さん。「とても勉強になりましたし、人脈もできました」。着物に関する知識を問う「きもの文化検定」(全日本きもの振興会主催)の中でも難関とされる1級に、3回目の挑戦で合格。勉強会に参加したり、京都などへ産地見学に行ったりして、さらに知識を深めた。
東京で初心者向けの講座、コーディネートのアドバイスなどの活動を始めた直後、コロナ禍に見舞われ、故郷の松本市へ戻った。
キモノシナノヤは、実家の屋号「信濃屋」を受け継いだ。今年から活動を本格化させ、夏には市内のサロンを会場に浴衣講座を開催。また、個人宅に赴いて、着物たんすの仕分け方や手入れ方法、リメークなど、依頼者の思い入れに寄り添いつつアドバイスをする。
「着物は難しい、面倒だとよく言われますが、一度整えて始めてしまえば、とてもおしゃれで楽しい」と北野さん。「着物はいろいろな柄を受け止める包容力がある。派手なものも古いものも、すてきに見えるのが“着物マジック”です」
今後は、着物だけのフリーマーケットを開いたり、作る技術を残すために作家や職人と商品開発をしたり、高校で着付け講習をしたりと、ビジョンを思い描く。「着物で出かけたくなるような店を、いつか開けたら」。着物文化を紡ぐキモノシナノヤのこれからが楽しみだ。
問い合わせは=インスタグラム=のダイレクトメッセージから。
【キモノシナノヤセレクト展「趣味のきもの」】1~4日午前11時~午後6時、松本市中央2のギャルリ灰月(高美書店ビル2階)。人間国宝の染色家・芹沢銈介(けいすけ)さんが埼玉県小川町の「紙漉(かみすき)村」を題材にした型絵染着物から、普段使いのものまでリサイクル品を中心に紹介。帯約40点(5000円くらい~)、着物約15点(2万円台~)。半衿や帯揚げなどの小物も。灰月℡0263・38・0022