今や長野県民のソウルフード「ビタミンちくわ(ビタちく)」。元祖は石川県七尾市に本社がある水産練製品の製造販売などを手がける「スギヨ」の商品だ。能登半島地震で被災した製造元。その地元の復興を応援しようと、古くからビタちくと縁深い大町市で2025年1月31日まで「信濃大町ビタミンちくわフェア」が開かれている。市内飲食店が提供する趣向を凝らしたメニューからは、店主の“ビタちく愛”が…。令和の時代に再び、ビタちくと大町市とのつながりが深まっている。
大阪の味やフレンチも
フェア協力飲食店(11月12日現在13店)では、おでんの具やカレーのトッピングの天ぷらのほか、ホットサンドやちくわパンなど、ビタちくの多彩なメニューが楽しめる。
おやつ、軽食の製造販売「おかしなてんとくん」(同市常盤)は、「うどん餃子(ギョーザ)ドッグ」(300円)=写真上=を提供。刻んだうどんをひき肉やニラなどとまぜ丸めて焼いた大阪府高槻市のB級グルメ「高槻うどんギョーザ」の具材に、1センチ角に刻んだビタちくを入れた。パンに挟み、梅肉と大葉とともに味わう。
同市に近い池田市出身の店主・遠近瑞穂さん(55)が大町に移住し昨春、同店を開店。うどん餃子ドッグは開店当初からのメニューで、信州人になじみのある食材を使おうと、ビタちくに着目した。
大阪と信州のご当地味の融合がユニークで「肉と魚、両方のタンパク質が取れます」と遠近さん。移住後に知ったビタちくは今や自宅の食卓にも欠かせない存在で、「火を通しても歯応えをしっかり感じる」とすっかりお気に入りだ。同店TEL070・8316・7886
フランス料理店「Cr●ete(クレット)」(大町市大町)は、コース料理のアミューズの一品として今月はビタちく入りの「マドレーヌ」=写真下=を提供。5ミリ角に刻んだビタちくと大葉を入れた生地をマドレーヌ型に入れて焼いた。ふんわりした中にビタちくの食感が感じられる。
食材に既製品はほぼ使わないというオーナーシェフの松島正幸さん(41)だが、フェアの趣旨に賛同。フランス料理との取り合わせにお客さまは「びっくりされます」。12月はキッシュに使う予定という。
安曇野市で育った松島さんは、磯辺揚げなどでビタちくを味わってきた。「県外にいることも多かったが、改めて食べると懐かしい味。ちょっと変わった使い方も知ってもらえたら」と話す。昼2970円~、夜4千円~。TEL0261・85・4485
黒部ダム建設時 作業員の活力源
ビタミンちくわは1952(昭和27)年に発売。アブラツノザメの肝油を配合し、戦後の栄養不足を補う貴重な栄養源として大ヒット。生産量の7割が長野県内に出回る。
63年に完成した黒部ダム(富山県)建設作業員宿舎で週1回ほど出されたビタちく入りカレーは、作業員たちの栄養・活力源だった。そのことを知ったスギヨは大町市との縁を感じて近年、同市内小学校での食育活動に注力。ビタちく入りカレーは給食にも出た。
能登半島地震でスギヨの生産工場は被災したが、ビタちく製造は5月末から再開。「フェア」では▽「がんばろう!能登」のラベル付き商品(支援金含む)購入の呼びかけ▽食べたビタちくの写真を投稿するインスタグラムキャンペーン▽市内飲食店でのオリジナルビタちくメニューの提供|を実施。インスタキャンペーン参加と飲食店で対象メニューを食べると、グッズなどが抽選で当たる。詳細は「おおまちカフェ」のホームページ=こちら=で。市まちづくり産業課TEL0261・22・0420
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