「マチスコ」地域をホットに 大町中こぶし学級生徒 トウガラシで手作り商品

学びや成長“隠し味”熱い挑戦

爽やかな辛さと甘酸っぱさ、ニンニクの風味が利いたご当地ペッパーソース「マチスコ」。大町市の大町中学校特別支援学級「こぶし学級」の生徒10人が、地域の人とつながって育てるトウガラシを使った、手作り商品の人気が急上昇中だ。
自分たちの力で大町を元気にできたら─。担任の田中祐貴教諭(46)の提案で2021年からトウガラシ栽培を開始。総合的な学習の時間で地域活性化につながる活用を考え、2年前に誕生したのがマチスコだ。栽培、製造とも市社会福祉協議会と連携して行う。販売店が拡大し、地元飲食店がメニューに用いるなど、その味や活用の幅の広さも受けて注文が相次いでいる。
生徒たちの学びや成長、地域愛が商品の“隠し味”。「中学生にできる地域おこし」への挑戦が、大町を熱くする。

トウガラシ育てペッパーソース

「マチスコ」(500円)は大町中学校に隣接する約15アールの畑を借り、こぶし学級の生徒が自ら育てたトウガラシを材料に、同校調理室で製造する。ピザやパスタばかりでなく、ギョーザや焼き鳥にかけたり、マヨネーズと混ぜて万能ソースにしたり。多彩な料理と相性が良い手作りの味が、地元住民や観光客らの間でじわじわとファンを獲得している。
こぶし学級担任の田中祐貴教諭は前任校の伊那市長谷中学校で、生徒とトウガラシを育てて製造したラー油を販売し、地域活性化に取り組んだ経験がある。大町中の前身の仁科台中に赴任した2021年から、名産品作りを目指して生徒とトウガラシ栽培を開始。
活動を知った地元住民の提案でペッパーソースを作ることにし、試作を重ねた。昨年6月に保健所の許可を取り、商品として市内農産物直売所や土産物店などで販売。校内や地域の催事で、生徒が対面販売もする。

地域ボランティアも協力 つながり増えて

一連の取り組みは、生徒らの活動に関心を持った市社会福祉協議会の福祉事業所利用者と共に展開する。売り上げは原材料費や茶菓代などに充てるほか、利用者の工賃にもなる。
栽培には大勢の地域ボランティアも関わる。増産を目指した本年度は、作付面積を増やして昨年度の倍以上の苗2700本を定植した。先月下旬の収穫作業は、ボランティアも一緒になって真っ赤な実を付けた株を引き抜き、「今年は豊作だね」などと話しながら汗を流した。
3年生の野澤裕紀さん(14)は「定植や収穫は大変だが、頑張ったかいがありたくさん買ってもらえてうれしい。人と話すのが以前より嫌ではなくなった」。栗林孝汰郎さん(15)は「(瓶に貼る)シールが曲がっていると商品として成り立たないので気を付けている。地域の人が協力してくれてありがたい」。
新商品の一味唐辛子「チリペンくん」(300円)は、ペンギンのような形の容器に注目した生徒がデザインを考案。校内販売用のラー油やトウガラシみそなどラインアップも増え、食用以外の活用も探る。
人口減少や高齢化、遊休農地の増加、景観保全など多くの課題を抱える地域に目を向け、地域おこしに動く生徒たち。田中教諭は「人と話すことに苦手意識を持つ生徒も多いが、マチスコを作る過程で社協や地域の人と自然に会話ができ、接客も経験してコミュニケーション力が高まった」と、変化を感じている。「マチスコを通じ、いろんな人と横のつながりが増えていけばいい」
栽培ボランティアや販売店の増加、飲食店での利用の広がりなど、地域の一員として足元を見つめ、楽しみながらも真剣に活性化に取り組む子どもたちの“ホット”な姿が、大人たちを動かしている。
購入の問い合わせなどは同校TEL0261・22・1817