安曇野の中西さん母娘「犬や猫救いたい」個人宅で保護活動

全ての犬猫の幸せ願い

ブリーダーの仕事が崩壊し行き場がない、繁殖させられないための飼育放棄、飼い主の死や病気で世話をする人がいない、病気なので飼わない─。そんな犬や猫を一匹でも多く救おうと、中西亜衣さん(41、安曇野市穂高有明)と母の洋子さん(67)は個人宅で保護活動をする。
東日本大震災がきっかけだった。東京電力福島第1原発事故で残され、飢え死にしている犬や猫を見かけた。猫が共食いしている現場もあった。人が生きるだけで精いっぱいで、犬猫はニュースにならない。「このままだとどんどん死んでしまう」。洋子さんに連絡した。「一緒に保護活動をしよう」
犬猫が伸び伸び暮らせる場をと、安曇野市に移住。現在は犬14匹、猫18匹を引き取っている。

東日本大震災の惨状がきっかけ

約千平方メートルの敷地に家が2軒ある。一方は母屋、もう一方は保護犬・猫の家で、現在は犬14匹、猫18匹が暮らす。ほかに約300平方メートルのドッグランがある。母屋にも、保護犬以外に10歳以上のシニア犬が12匹いる。「情が湧いて」と中西亜衣さんが心情を語った。
亜衣さんは岐阜県出身。子どもの頃から動物が大好き。東京でマンション暮らしをしていた時は、野良猫を引き取り、人慣れしたら保護活動をする団体に渡すボランティアをしていた。
東日本大震災の福島第1原発事故で、避難区域に残された犬猫の悲惨な状況を目にした。外飼いでつながれたまま死んでいる犬、多頭飼いで家の中に閉じ込められ、共食いしている猫などを見て心が締め付けられた。現地で活動している人の手伝いをした。「何とかしないと」という思いが強くなった。
安曇野市に引っ越した4年前から、本格的に保護活動を始めた。飼い主が亡くなったり、病気になったりして飼えない、年齢的・体力的に繁殖に使えない、病気や障害がありブリーダーが手放した|といった犬や猫を、種類や保護した状況などに枠を設けず引き受ける。「野良猫だけといったルールを持つ団体もあるが、自分のやり方で助けたいと、個人で活動することを選んだ」

譲渡会を開いて新たな飼い主へ

去勢や避妊、狂犬病の予防接種、血液検査など、飼い始めの初期医療だけで1匹3万~4万円かかるという。さらに歯が悪かったり、皮膚病にかかっていたりといったケースもあり、薬代などで40万円以上かかることもある。これは全て個人負担だ。
亜衣さんはカラオケバーを東京で3店、安曇野市豊科で1店を経営、洋子さんも動物病院で薬を販売するなどし、費用を捻出する。カラオケバーは、自分たちの取り組みを知ってもらう場でもあるという。
譲渡会を開くなど、これまでに400~500匹の犬猫を新たな飼い主と結びつけた。実際に対面し、かわいいと思ってもらうことが大切という。責任を持って最後まで面倒を見てくれるか、飼う環境は整っているのかといった審査をし、「大丈夫」と思ったら託す。
飼い主には、猫は2万6千~2万8千円、犬は平均4万5千円の費用の準備をお願いする。ワクチンなどの実費という。
「保護活動をやめることが夢」と亜衣さん。「ボランティアをやりたいわけじゃない。死んでしまうから活動している。飼うなら子犬がいい、血統書がないと駄目|といった意識を変えてほしい。全ての犬猫が幸せなら、私たちの活動は必要なくなる」と力を込める。
次回の譲渡会は12月15日。見学などは随時受け付けている。