必死の願い懸命に治療「猫の命助けたい」行動した人たち

熱い思い命の重み伝えて 笠原芳子さん 北原佳代子さん

車にひかれるなど、事故で命を落とす動物。人間に身近であるが故に犬、猫もリスクは大きい。そんな動物を見かけ、何とか助けたいと動物病院に駆け込んだり、必死で世話をしたりする人がいる。音楽教室を開く笠原芳子さん(安曇野市豊科)と小学校に勤務する北原佳代子さん(52、松本市和田)も、行動した人たちだ。
笠原さんが助けたのは、草刈り機で脚、頭を切られたとみられ、ぐったりして意識がなかった雄猫。獣医師もさじを投げかけたが、笠原さんの必死の願いで、懸命に治療をした。
北原さんが救ったのは、車にひかれたやはり雄猫。おびえて暴れ、かみつかれたが、病院へ運んだ。
温かい心でつながった命。人に見守られながら幸せに暮らしている。

脚や頭部に重傷4回の手術行う

笠原芳子さん=写真上=は2021年7月、母の家で石の上に横たわっている猫を見つけた。全く動かず、後ろ脚は2本ともぶらぶらした状態。左前脚は半分なく、頭も頭蓋骨が一部削られ、鼻先も少しなかった。「草刈り機で切られたのではないか」と獣医師が推測した。
「助からないかもしれない」と言われたが、「私は絶対死なせない」と治療を始めた。後ろ脚は既に腐っており、根元から切断。半分だけ残った左前脚も危険な状態だったが、笠原さんが毎日薬をつけ、テープを巻いて傷口を保護。懸命の努力で、切断を免れた。頭を針金で縫合するなど、手術は4回行ったという。
後ろ脚が2本なく、左前脚も半分になったが、元気いっぱい。お尻をすりながら移動したり、前脚でバランスを取りながら歩いたり。笠原さんの交流サイトには、そんなホッコリ君の様子が時々アップされる。「頑張って!」「かわいい」とコメントが入るなど、人気者だ。
甘えん坊で、笠原さんが大好きなホッコリ君。助けた時は500グラムほどの子猫だったが、今は3・5キロあり、毛並みもつやつやだ。笠原さんは「助かって本当にうれしかった。人間の熱い思いが、励みになったのでは。生命力の強さを感じた」。
保護猫のきょうだい、弁慶君、白雪ちゃんも一緒に暮らす。笠原さんは「他の猫のように動けない。楽しみはあるのかな」とつぶやくが、笠原さんを見る目は信頼にあふれている。「ずっとかわいがってあ

げたい」

車にひかれ骨折見つけて病院に

北原佳代子さんは今年10月、車にひかれた猫を助けた。一度は通り過ぎたが、現場に戻り病院に連れて行った。「動物は大好き。(飼っている)犬が同じような状態だったらと考えると切なくなった」と振り返る。
保護する際かまれたが、それが「絶対助けたい」という思いにつながった。「かむ力が強く、生命力を感じた」
夜だったため、動物病院は閉まっている時間。あちこちに電話し、ようやく受け入れてくれる病院を見つけた。腰の骨盤骨折、右後ろ脚の骨折で、それぞれピンを入れる手術をした。
退院し、家で暮らすようになった。TOM君と命名。夫や子どもだけでなく、ピットブルの雌ペカちゃん、ダルメシアンとラブラドルレトリバーのミックスの雄ブルース君も温かく見守る。「TOMが物音を立てると人間を呼びに来る」と北原さん。
獣医師によると5、6歳。最初は全く鳴かなかったが、今は人に甘え少しずつ声を出すようになった。12月7日にはピンを抜く手術をする。「あれだけのけがをして頑張っている姿を見ると、自分もめそめそしていられない」と北原さん。助けたつもりが、自分が癒やされているといい、「少しずつ家族になれたら」とほほ笑む。

愛情と懸命な治療で一命を取り留めた猫たち。二つのエピソードが命の重みを伝える。