
山雅=学生をファン・サポーターに 信大=地域に親しみやすさPR
J3今季最終節が行われた11月24日、松本山雅FCがアウェーで戦ったアスルクラロ沼津戦のパブリックビューイング(PV)が信州大松本キャンパス(松本市旭)で開かれた。学生をファン・サポーターに取り込みたい山雅と、地域住民の関心を引き、親しみやすさをPRしたい大学との思惑が一致し、初開催となった。
会場となった階段状の大講義室に約140人が集まった。試合会場からの中継が始まり、山雅サポーターで満杯になったスタジアムのアウェー席がスクリーンに大写しになると、「おーっ」というどよめきと拍手。試合が始まると、中継から聞こえるチャント(応援歌)に合わせて歌ったり、手拍子したりして画面越しに応援した。
試合は山雅が後半ロスタイムに先制し、そのまま勝利。参加者はハイタッチしたり抱き合ったりし、喜びを分かち合った。母親と来た安曇野市豊科の小川原桜さん(22)は、「現地と一緒に応援できた。来てよかった」と喜んだ。
初企画に手応え 次につなげたい
信大と山雅の運営会社は2020年、地域の発展と人材育成を目指す包括的連携協定を結んだ。副学長の林靖人教授(46)=感性情報学=の授業にゲスト講師で山雅の神田文之前社長(47)を招いたり、学生に試合運営を体験させたりする中で「PVを開けないか」というアイデアが出たという。
信大生は県外出身者が約7割を占め、学部は八つあるが、1年時は全員が松本で学ぶ。新たな若者ファンを開拓したい山雅にとって、もともとアピールを強化したい層だった。「サンプロアルウィンは遠い」という学生も、キャンパスでのPVなら来やすいと期待した。
信大にとっては、学外にキャンパスを知ってもらう機会になる。林副学長は「『一番入りにくい場所』と思っている地域の人もいるかもしれない。実際に来て関心を持ってもらえれば。『信大で学びたい』と思ってくれる子どももいるかも」。それぞれが実現に向けて動き、調整がついたJ3最終節での開催となった。
来場者には、信大開催を理由に挙げる人も。同市島立から父親と訪れた男子中学生(14)は「大学も気になって。スクリーンも教室も、中学とは大きさが全然違う」。最近、山雅の試合を見始めたという、秋田県出身の男子信大生(19)は「ここでもこれだけのファンの熱量があるのはすごいと思った」と、改めて応援の魅力を感じた様子。
山雅の横関浩一執行責任者(45)は「初めてのイベントで、みんなで成功体験をつくれた。次につなげるのが重要」。林副学長も「今回は会場を貸しただけだが、次は運営の協力もできれば。学生が企画を考え、学びの機会にすることもできるかもしれない」と、次回開催に思いを巡らせていた。