サポート事業も立ち上げ
離れた場所から患者を診る「オンライン診療」について、実践者たちの講演を聴くイベントが先月、塩尻市内で開かれた。同じグループが半年前に開いた初回に比べ、倍以上の参加者が集まるなど関心が高まる中、グループではオンライン診療の運営を助ける事業を立ち上げた。
11月19日に開かれた「第2回長野県オンライン診療研究会」。会場に約40人が集まり、ネットでも約70人が視聴した。自治体や病院関係者が主だが、個人で参加する人もいた。
報道も増えた。前回はなかったテレビ局のカメラが3台、会場の後方に並んだ。
告知に力を入れたわけではないという。「広がったのは口コミか。(将来の医療体制について)みんなひっそり困っていたのでは」と、主催者代表の今井紳一郎・ときのクリニック院長(42、同市広丘原新田)は推し量る。
不安は容易に想像できる。とりわけ過疎地では医師も高齢化が進み、医療体制の維持が難しくなる一方だ。
対応策の参考にしてもらおうと、この日は県立木曽病院(木曽町福島)と伊那市企画政策課の職員が現場の取り組みを報告した。
木曽病院は昨年、医師がいない無医地域の施設にカメラやモニターを持ち込んで「診療室」にするオンライン診療を始めた。医師は、病院にいながら遠隔地の患者の元を「巡回」する。リアルな対面診療だと1時間単位でかかる移動時間を別の業務に充てられる。
同病院医事課の色部(いろべ)文謹(ふみのり)さん(26)は、「原則は対面だが、厳しい地域もある。病状が落ち着いている患者の診療を補完するのにオンラインを有効活用したい」と話す。
研究会への参加は、今井医師から打診された。自身の報告への反応に加え、伊那市の事例が聞けたことも収穫になったという。医療用に仕立てたワンボックスカーで機動的に広域をカバーする取り組みは、「話には聞いていたが、直接、情報交換していなかった」という。「今回、ヨコのつながりができたのはありがたい」
◇
情報共有の場をつくろうと、今井医師が薬剤師らの仲間と第1回の研究会を開いたのは4月。反響は予想以上で、潜在的なニーズの大きさを感じたという。研究会の安定的な開催のため、一般社団法人「信州医療開発」を設立した。
また、ニーズに合わせ、地域の医療体制をオンラインを絡めて構築するサポート事業を始めた。「オンラインを検討もしていない人は多い」と今井医師。「私自身も対面の方がいいと思うが、医療というインフラを持続するのにオンラインは選択肢として欠かせなくなる」と話す。
詳しくは信州医療開発の=ウェブサイト=に。3回目の研究会は、来年5月の開催予定。