小学校に入学すると、スタートからひたすらひらがな、カタカナなど文字を書く学習が続きます。不器用だったり、不注意だったり、形を認識することが苦手だったりして字を書くことに困難さがあるお子さんにとっては、早々から苦戦することになります。
この時点では本人なりの多大な努力でなんとか乗り切っていても、学年が上がって習得するべき漢字が増えたり、字形が複雑になったり、書く量が増えたりすることで、苦しさが目立ってくるお子さんもいます。この頃になって病院に相談されることもありますが、小学校半ばにもなっていると、これまでに先生や親、友達などから「字が汚い」「丁寧に書きなさい」「書き順が違う」「もっとちゃんと書いて」などの注意を何度も受けたり書き直しをさせられたりして、“自分は字を書くのが苦手だ”とか、ひいては“自分は馬鹿だ”などと思い込んでしまっている子も少なくありません。
病院で正式に「限局性学習症(書字障害)」という診断が出れば、そうした注意・叱責(しっせき)はしないように気を付けてもらえるかもしれません。でもそれでは遅いのです。
診断があるから注意をしないというのでは、逆に言えば診断がないうちは字がきれいに書けない子には注意をするのが当然ということでしょうか。注意・叱責の積み重ねで苦手意識を蓄積してしまい、そのために鉛筆を持つだけでイライラしてしまう、勉強全部が嫌いになる、学校に行けなくなるというような取り返しのつかない状態に陥っているお子さんが後を絶たないのです。2016年に文化庁から、漢字の「とめ」「はね」「はらい」の指導についてはこだわりすぎないという方針も出ています。
学校としては試験で減点されない正しい字体の指導が必要と考えるのかもしれませんが、「ダメ出し」の指導を受けることで、傷つく子どもがいることにも気付いてほしいのです。そして、字を書くのに苦戦している様子があるのなら、厳しい指導より、早めに適切なアセスメントにつなげて、その子に合った学習の仕方にアクセスできるようにしてもらえれば幸いです。
【なないろキッズ】 #102 字が苦手対応適切に
- 2024/12/12
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ