【ガンズリポート】マッチレビュー J2昇格PO決勝・7日富山2-2山雅 あと3分J2復帰逃す

2点リードも後半失点守り切れず

松本山雅FCは後半ロスタイムに追いつかれ、大会規定によりリーグ戦上位のカターレ富山に最後の昇格枠を譲った。2年前に勝ち点1差で逃したJ2復帰。今回は「あと3分」まで手中にあったが、つかみきれなかった。
試合終了の笛。ピッチに山雅の選手たちが倒れ込んで動かない。緑に染まった4千人のアウェー席は静まりかえった。時間が止まったようだった。
残酷な結末だが、シーズンを通じて見ると、順当でもある。
リーグ戦は富山が3位で山雅は4位。富山は、ホームで1度しか負けていなかった。
山雅は、15分ごとの時間帯別の失点数で後半31分以降が最多の13で、うち4失点がロスタイムだった。「守り切れないことへの明確な答えはない。ピッチの中での判断、ベンチワークの対応が足りなかった。4位に終わった原因」と霜田正浩監督は振り返る。
富山戦は、いい意味でも悪い意味でも、今季の集大成になった。
「複数得点し、無失点を目指す」と霜田監督は言い続けた。ゲームを支配し、2─0で折り返した前半は、その理想を表現できた。
だが後半35分に失点すると、ばたつく。ボールを奪うと単純に蹴り返すだけ。前線に収まらず、すぐに自陣に押し戻される。「自分たちがやろうとしているサッカーではなかった」と野々村鷹人。シーズン中の苦闘をほうふつとさせた。土壇場で今季の地金が出て、7試合ぶりに2失点目を喫した。
10月下旬の11位からの巻き返しは、スタンドが強烈に後押した。試合を追うごとに緑が濃くなり、熱を帯びた。「かつてのような雰囲気になった」と、選手時代を含め山雅に20年いる小澤修一社長。J3に降格して3年、ファン・サポーターを含めてクラブには、まだ地力がある。今季最終盤で、その手応えは残した。
ピッチから立ち上がった選手たちに、ファン・サポーターは力強い「マツモトヤマガ」コールを送った。来季へ時が動き出した。

育成出身ルーキー樋口 今季最初と最後のゴール

山雅の2点目は、2月のリーグ開幕戦で1点目を挙げた樋口大輝のヘディングシュートだった。塩尻市出身で山雅のユースアカデミー(育成組織)で育った23歳の大卒ルーキーは、チームの今季最初と最後のゴールを決めて1年目を終えた。
リーグ戦6得点は守備の選手ながら、攻撃陣の安藤翼と菊井悠介と並びチームで3番目に多かった。
ただ、目標の昇格にはつながらなかった。富山戦の夜、ほかの選手らとチームバスで松本に戻り、初雪が積もる街を見て「1年が終わったと、すごく感じた」。
開幕先発の座をつかんだが、間もなくベンチも外れた。それでも馬渡和彰や藤谷壮ら経験豊富なサイドバックと練習し、「高いレベルでできている」と実感。6月から再び先発に定着した。
家族や地元の友人らから「来年も頑張って」と言われた。常々、アカデミー育ちの責任を口にしてきた。来季も山雅のユニホームを着ることになれば「自分に足りないところを補い、絶対に昇格したい」と力を込める。

「来年こそ優勝し昇格を」アウェーのスタジアムに4000人

アウェーのスタジアムに駆け付けた約4千人のファン・サポーター。相手を圧倒する声量のチャント(応援歌)で選手を鼓舞し、得点時に振り回すタオルマフラーや旗が、波のようにスタンドをうねった。歌声は後半ロスタイムに同点とされた瞬間も途切れず、その熱量は間違いなく昇格に値した。
3年前から応援する大波暁斗さん(21、松本市)は「最後に引いては駄目。(富山には前回3点取られていることもあり)2得点で勝つのは難しいと思った。今季は最後が良かっただけ。プレーオフになった時点で(昇格は)厳しかった」と納得の表情。
東京から駆け付けた朝日村出身の高橋香苗さん(39)は「(終了間際に追いつかれたのは)今季よく見る、良くないときの山雅だった。ただ、J3で3年かけてここまで来た。プレーオフはもう嫌。来年こそ優勝して昇格を」と期待した。