【講演会聞きどころ】地域活動家・小松理虔(りけん)さん(45、福島県いわき市)

「表現者」と「共事者」関係を模索

松本市の障害者支援施設「あい・アドバンス今井」(今井)は、創立50周年記念の特別講演会「医療と福祉をつなげる『共事』のこころ」を、村井病院(村井町西2)との共催で市内で開いた。地域活動家で著書「新復興論」が話題を呼んだ小松理虔(りけん)さん(45、福島県いわき市)が話し、医療や福祉に携わる人ら約100人が聞いた。(10月31日)
「老い」や「死」をポジティブに発信する、いわき市の情報誌「igoku(いごく)」の編集に関わり、初めて認知症の人と過ごした。その人の手料理を食べ、昼寝をし、自分が認知症を知らなかったこと、専門家に任せ過ぎてきたことに気づいた。
「支援する、される関係」から「一緒に何かをする関係」を模索し、利用者の行為を「表現」と捉える施設がある。そこで台車に大きな荷物を載せて歩くのが好きな男性と出会った。一緒に散歩し、彼の台車をガラガラと押したとき「ああ、これがしたいんだ」と、彼の根っこにある何かを自分の中に感じた。
この施設に月1回1年間通って社会や人の見方が変わり、子育てにも影響した。僕が東日本大震災で「被災した人」であり「地元住民」でもあるように、彼らは「障がいのある人」で「表現者」だ。この体験は、障がいについての考えが違っていた自分を知るチャンネルになった。福祉施設には人を変えるほどのパワーがある。
たまたま施設に来たおばちゃんの声がけが誰かの心をほぐしたり、マージャンをしたい人が来てマージャン好きな利用者さんの相手をしたりと、僕のように専門性がない人にも、できるケアがある。「共事者」は、こういう人たちを指す。その人たちに出会うために、必要な言葉としてひらめいた。
「共事者」と出会うには、医療や福祉の日常を言葉にし、発信することが大切だ。それには地域の人や企業、ゲストハウスやレストランのシェフ、写真家や学生、メディアや行政もつながり、医療や福祉の法人がリードして「自分らしく暮らせる町ってどうやってつくっていったらいいの?みんなで考えようぜ」という場をつくることだ。「障がいがあっても認知症になっても、自分だけ、家族だけで頑張らなくていい。今まで通り暮らせる。そこに事を共にする仲間がいるから」というメッセージにつながる。
誰もが自分という「当事者」で、他者と向き合えば「共事者」だ。僕も、福島で起きている問題を皆さんと一緒に考えたいというところで、同じ土台に立っている。他者や外部の人たちと連携し、医療や福祉が開かれていくといい。