安曇野市穂高の日本刺しゅう家、永島恵子さん(74)は、同市特産の天蚕(てんさん)糸(ヤママユガの繭から取った糸)に魅せられ、着物や数寄屋袋(茶道に使う袋物の一つ)に刺しゅうを施している。今秋、自身が教える生徒らと市内で開いた展覧会で初披露。興味のある人に刺し方を伝えようと考えている。
幅広い世代に指導「技術伝えたい」
天蚕糸に出合ったのは日本刺しゅうを始めた50代の頃。天蚕センター(穂高有明)で目にし購入したが、「普通の絹糸より強いため、刺しにくかった」と言う。
2013年秋、京都御所近くで道に散ったイチョウの葉を見て、天蚕糸で表したいと思うように。15年から着物に刺し始めたが、「糸の引き加減が難しく、何度もやり直した」。
色はきれいだが、目立ちにくいため、その後は、天蚕糸と絹糸を組み合わせた図柄で数寄屋袋に挑戦。今秋の展覧会で初披露した。「今後は徐々に生徒たちにも天蚕糸の刺し方を伝えようと思っている」
永島さんによると、日本刺しゅうには「京(きょう)繍(ぬい)」「加賀繍」「関東ざし」などがあるが、「重きを置く技法や色遣いが微妙に違う」。日本刺しゅうを始めて最初の2年は関東ざしの手法を学び、その後は京繍に魅せられて京繍伝統工芸士・中村彩園さんが開く京都の教室に通った。
10年から複数箇所で教えるようになったが、今は自宅だけ。幅広い世代の13人に指導している。