今井恵みの里プロジェクト
活動テーマは「今井を知る!」。松本市の今井小学校3年生(34人、中島雅也教諭)が「今井恵みの里プロジェクト」を立ち上げ、活動している。
社会科の「地域探検」を皮切りに、総合学習として道の駅「今井恵みの里」の調査、特産のリンゴ学習、オリジナルマップ作りなど、多角的に地元の姿に迫ってきた。
国語の「インタビューのしかた」、算数の「大きな数やお金の計算」、社会の「商品の流通やお店の工夫」など、総合的・実践的に学びを深めてきた。子どもたちは、「今井のことをもっと学び、多くの人に伝えたい」という思いが強くなったという。
11月22日には、現時点での集大成として、同駅で「りんごのお店屋さん」を開店。リンゴや加工品販売の他、学習の成果を披露した。
「地域のため」できること考え
本年度初めの地域探検で、「今井のことを意外に知らない」と気付いた今井小学校3年生の児童たち。「今井を知ろう」と何度も地域へ出て行った。同校から歩いて5分ほどの場所にある道の駅「今井恵みの里」へも、足しげく通った。
同駅の協力を得て店内を見学し、店員が来店客とどう関わっているか、客はどこから買い物に来たのかなど、積極的にインタビュー。季節ごとに商品が変わること、陳列の仕方などに興味を持つ児童がいた。たくさんのジャムやジュースが並ぶ加工品コーナーで、各商品の特徴やこだわりを比べる児童もいた。
同駅の体験農場では、食育事業の一環で毎年、3年生がリンゴ作りに関わり、花から実がなり大きくなるまでの変化を見続けてきた。児童の家の9軒がリンゴ農家だったこともあり、「出張授業」をしてもらい農家の仕事や工夫も教わった。
学び深めるうち店の構想膨らむ
疑問に感じたことを追及し学びを深めるうちに、やりたいこともどんどん増えた。「リンゴのお店屋さんを開けば、クラスのみんながやりたいことができて、今井のことをたくさんの人に伝えられるのでは」と構想が膨らんだ。
保護者のリンゴ農家に加工用リンゴの提供を依頼すると、快諾が得られ、7種類が持ち寄られた。加工所に「ここでしかできないものを」と協力を依頼し、スペシャルブレンドのジャムとジュースを作り、ラベルを自作。同所のパティシエ監修でパフェも作った。販売用に預かったリンゴは、児童らが選別して袋詰めし、傷があるものは値段を下げ、理由を記した紙を添えるなど工夫した。
クイズを交えた品種の紹介やリンゴをテーマにしたゲーム、物語や紙芝居などを作り、参加した人へのお土産グッズもそれぞれが作製。地域を巡った経験を基に作ったオリジナルマップや、一人一人がおすすめの場所に住むキャラクターになり切った「紹介カード」など、6チームに分かれて学んだことを表現する準備をした。
りんごのお店屋さん当日の11月22日、開店前から大勢の人が集まった。子どもたちは「いらっしゃいませ」と元気に声を上げ、品種や商品の説明をしたり、ゲームへの参加を呼びかけたりと、生き生きと活動した。
出張授業に携わった農家の三村志保さん(35)は「リンゴの成長や購入してもらう喜びを感じたり、傷ついたものにも丁寧な選別や値段付けをしたりと、生産者でなければできない体験をした。親としても生産者としてもうれしい」と笑顔。
中島教諭は「子どもたちは、地域の人に愛され応援されていることを実感し、大好きな地域のためにできることを考え始めている」と成果を喜んだ。
さらに、「他の学年にジャムをプレゼントして物語を伝えよう」「グッズを使った店を開きたい」「ジャムの在庫を売り切ろう」「ジャムやジュースで調理をしたい」と、新たな計画とチームが発足。「お店屋さんは通過点」(中島教諭)と、次の目標に向けた取り組みが始まっている。