人権意識に根差した関係性を
塩尻市は人権週間(12月4~10日)に合わせて「豊かな心を育む市民の集い」を開いた。地域防災や「災害とジェンダー」の専門家として講演や研修を行い、国や自治体の防災政策にも関わる「減災と男女共同参画研修推進センター」(東京)共同代表の浅野幸子さん(51)が「避難生活で健康被害や関連死を出さないために」と題して講演し、市民など約100人が聞いた。(7日)
災害が起きると平常時の課題が表に出てきて増幅され、人々が混乱状態に追い込まれる傾向がある。そういう時は、普段から人権意識に根差した互いの関係性を大事にしていることが、非常に重要になる。
災害時はDV(ドメスティックバイオレンス)などの問題も出てくる。防止の取り組みや相談支援体制があれば、慌てることなく抑制したり、素早く支援につなげたりすることができる。
1月の能登半島地震では多くの関連死、特に避難所生活の中で高齢者に犠牲が出ている。数年前の長野の大水害でも、高齢者や障がい者、妊婦などが自力で避難できない課題があった。避難やその後の生活を考える時に重要なのが「ケア」の問題。衛生や栄養、育児、介護など、ケア対策が防災のほとんどを占めるといっても過言ではない。
その時に、男女共同参画の視点で取り組まなければ、多くの健康被害や関連死が起きる。当然だが、現場でなかなか改善されないのがネックになっている。そのため国の防災基本計画にも、男女共同参画の視点がさまざまな形で盛り込まれている。
避難所の運営は従来、大半が男性のリーダー中心で、女性は補佐役だった。特有のケアの経験や知識がある女性が意思決定に主体的に関わり、運営に参画して提言すれば、実践に生かされる。
避難生活の困難は、性別や立場で異なる。障がい者や外国人、要介護者、LGBT(性的少数者)が排除されないよう、人権意識を育み多様な視点を反映した対策は、地域の防災力を高める。適切な共助と支援は防災だけでなく、復興後の住みよいまちづくりにも生かされる。