里親制度の周知や里親になることを希望する家庭向けの研修、すでに里子を養育している家庭への支援などを包括的に手がける「里親支援センターひまわり」が、松本赤十字乳児院(松本市元町3)を母体に7月開設されました。院長の樋口忠幸さん(63)とセンター長の青木洋子さん(62)に、里親制度やセンターの役割などを聞きました。
★開設の経緯
4月施行の改正児童福祉法で、里親支援事業などを担う児童福祉施設として「里親支援センター」が位置づけられたことを受け、院内に開設しました。松本地域では第1号です。
2016年の児童福祉法改正で、子どもが権利の主体であることが明確にされました。それまで、さまざまな理由から親元で暮らせない子は、主に児童養護施設などで養育されてきましたが、この改正では「子どもの健やかな成長のために里親などによる家庭的養育を優先する」との理念が示されました。
★里親の種類
将来的に特別養子縁組により養親となることを希望する「養子縁組里親」と、養子縁組を目的とせずに、家族と暮らせない子どもを一定期間養育する「養育里親」があります。養育里親による預かり期間は短期、長期などさまざまです。
「ひまわり」では松本、塩尻、安曇野市の養育里親を支援しており、1日時点で22組37人が養育里親として登録、6世帯が実際の養育を行っています。
★どんな人が養育里親になれるか
特別な資格は不要ですが、養育里親を希望する人の生育歴や経済状況を含む詳細な調査や研修を経て、県の審査会で認定・登録されることが必要です。愛情と社会貢献の意識の下、子どもの人権を尊重できる人が求められます。里親不足が大きな課題である一方、誰もがなれるとは限りません。
★関心はあるが不安も…
センター、児童相談所、行政、園や学校などが連携し、里親家庭を支援する「チーム養育」の充実に力を入れています。里親同士の交流の場である「里親会」の存在や、一時的に里子を預けて休息を取れる「レスパイト・ケア」制度なども心強い支えとなります。また、子どもを迎え入れている期間は、自治体から生活費や里親手当の支給があります。
★実親との関係は
かつては、実親による虐待などから子どもを守るためには「引き離して児童養護施設等で保護すべきだ」と考えられていました。しかし、子どもにとってはいかなる実親も大好きな存在です。今は「可能な限り里親が子どもを家庭に受け入れ、実親にとっての難しい部分を補いながら一緒に子育てしましょう」という考えにシフトしています。
里子を迎え入れている間、実親と交流するケースもあります。
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青木さんは「里親さんが自ら言葉にできない思いもキャッチし、安心して話し合える関係を築きたいです」、樋口さんは「全ての子どもは次世代を担う社会共通の財産です。里子が『特別な子』扱いされることなく暮らしていける社会になるよう、力を尽くします」と言います。
2人は「これまでは孤立しがちだった里親を地域社会全体で支え、一緒に子どもを育てる『チーム養育』を目指します。一人でも多くの方に里親制度の正しい知識や、里親への関心を持ってもらえたら」と願っています。