英国から移住“第二の人生” ベン・コイトさん、有美さん夫妻 筑北にカフェオープン

英国から筑北村に移住したベン・コイトさん(61)、有美さん(59)夫妻が、古民家の土間を改装したカフェ「Silk&Soy(シルクアンドソイ)」(同村東条岩戸)を今秋オープン。地域の憩いの場になっている。「友人と話したりくつろいだりしに来てほしい」という。
江戸末期には、たまりじょうゆが造られ、大正後期からは養蚕が行われた、築約160年の古民家。家の歴史や物語を大事にしたいとの思いで、「絹と大豆」を店名にした。
ベンさんは、米国のニュース専門チャンネルCNNの報道カメラマンだった。引退を機に2022年に移住。自然がたっぷりの環境や、優しく迎え入れてくれる人の温かさが気に入り、すっかり地域に溶け込んでいる。筑北ライフを楽しみながら、夫妻は第二の人生を歩んでいく。「村の魅力が伝わる場所に」

落ち着ける空間住民や観光客も

自然豊かな山あいにある古民家喫茶「Silk&Soy」。12月中旬、カフェを訪れると、地域住民らがゆったりとした時間を過ごしていた。店内は、古民家の雰囲気を残したほっと落ち着ける空間で、看板犬のクッキーが優しく迎えてくれる。「のんびり過ごせて村外から来る人も楽しめる、村の魅力が伝わる場所にしたい」と有美さん。
カフェでは、有美さんが自家製の焼き菓子やランチを提供。コーヒーや紅茶は、英国でバリスタとして働く次男のリドリーさんから、夫婦で入れ方を教わった。
店舗の改装は、大工の知恵を借りながらベンさんが主に担う。ペンキ塗りや床の張り替えなどはお手のもの。英国の、古い物や壊れた物を修繕しながら使う習慣が生きているようだ。
来年開店するゲストハウス「太(た)まり屋」にも、断熱材として使われていた明治時代の新聞や古道具などをあえて残し、家の歴史を大切に伝える。
夫妻は1988年、二人が勤めていたCNNの東京支局で出会った。結婚後は英国やイタリアなど欧州を拠点とし、ベンさんは旧ユーゴスラビアの紛争など、戦場を含め35年間で50カ国以上を取材で訪れた。

読み聞かせなど子どもらと交流

2020年に引退し、知人が信州にいた縁で、22年に筑北村に移住。仕事柄、大都市や戦場に行く機会が多かったため、ベンさんは「英国の田舎の雰囲気に似ていてリフレッシュできる」と気に入っている。
二人は地域とのつながりを大切にし、月に1度、地域の子どもたちと英語で交流。保育園や中学校で絵本の読み聞かせをしたりして英会話を教えている。
9日はひまわり保育園(同村坂北)に夫婦で出かけた。「ベン先生!ゆみ先生~!」と園児から大人気だ。工作やからだ体操など、一緒に遊ぶ中で話す言葉は全て英語。園児は見て聴いてまねをして、発音したり、英語の意味を理解したりする様子が見られた。「みんなが笑顔で迎えてくれて私たちがすごく楽しい」と二人。
四季の移ろいを感じる村の暮らし。有美さんはその魅力を実感している。また、「村には素晴らしい職人や作家がたくさんいる」といい、今後、展示会や講習会、英会話とビールを楽しめる夜のイベントなども企画している。
カフェはペット同伴可能で、入り口やトイレは段差のないバリアフリー仕様になっている。月~水曜定休。午前10時~午後6時。℡080・9373・1428