【講演会聞きどころ】13年間ひきこもりを経験 上野美幸さん

散歩やラジオで心が外向きに

松本市双葉の子どもの居場所「みなもと」は、13年間引きこもりを経験したアルバイト上野美幸さん(46、佐久市)の講演会をなんなんひろば(松本市芳野)で開いた。市内外から約30人が参加し、社会とつながるまでの出来事や思いを聞いた。(12月15日)
中学1年生の夏休み明けから不登校になった。きっかけは、子どもの立場ではどうにもならないことだった。
家は経済的に苦しく、言葉にならないストレスを感じていた。妹が自分の髪を繰り返し抜いてしまう「抜毛症」になり、やがて私も同じことをするようになった。家族を含め、周りの大人は気づいていたはずなのに、話題にする人は誰もいなかった。
学校に行けなくなったが、家では家事を手伝っていた。親は「恥ずかしいから外に出るな」と言い、親戚の葬式にも参列させてもらえなかった。「私は恥ずかしい存在なんだ」。そう思うと、1人で外出もできなかった。
転機は突然やってきた。社会人になった妹が犬をもらってきて、私が散歩に連れて行くため、妹が洋服や靴を買ってくれた。毎日散歩をするうちに心も外に向くようになった。
ラジオが大好きで、27歳の時、人生相談の番組に電話した。そこから地元の保健師とつながり、就労継続支援B型施設に通い始めた。すぐに一般企業で働き自立したかったが、保健師からまずは作業所へ通うことを勧められた。
その後、就労支援員の紹介で、企業のアルバイトに就くなど働き先を広げていった。家から出られなかった頃は、外に出て稼げない自分を責めた。「家にいるのにご飯食べてごめん。お風呂に入ってごめん」と。今は困難を乗り越えた経験を生かし、行きづらさを抱えた人が社会に出るための支援活動をしている。
同じ境遇の人には「引きこもっていても、好きなことをしてもいい」と伝えたい。人が会いに来ると拒否してしまうが、心の中では「助けてほしい」と思っている。支援者には、本人が嫌がることはしないで、普通に接してあげてほしい。動ける人が、必要な情報を集めて行動してくれることを願っている。