ネット配信者が薦め店舗は手助け
今年は、どんな農業資材が売れたのか。家庭菜園を楽しむ人からプロまで利用する「農家の店とまと」山形店(山形村)を訪ねた。
「ユーチューブを見る人が増えました」。関根良二店長(51)の話はSNSから始まった。栽培指南の動画を見て買いに来る人が多いのだという。
「カーメン君をご存じです?」。代表的な農業チャンネルだという。調べると、登録者数は112万人。人気芸能人にも引けを取らない。
そんな農業界のインフルエンサーの推薦がきっかけになり、同店でも一年を通じて売れた商品があるという。「カルスNC─R」という、微生物の働きを利用する土作り資材だ。粉末や粒状で、米ぬかなどの有機物を一緒に土にすき込むと堆肥ができるとうたう。
扱っている店が少なく、同店には県外客も訪れる。メーカーでは工場の増設計画があるほどの人気ぶりだ。
商品自体は発売から数十年たつ。ただ、一昔前は「微生物農法」というと特殊な目で見られたものだ。
それが近年、有機農法への関心と共に微生物へのニーズが高まった。従来にない資材を求める農業者がSNSに探索のつてを頼り、インフルエンサーが応えた形になった。
他にも、売れる土作り資材は増えたという。ただし、インフルエンサーのやり方通りでうまくいくとは限らない。田畑それぞれの土質、地域の気候に合わせる必要がある。
SNSの情報をうのみにするだけでは結果が出ない。農業の難しさ、面白さだ。
それは、実店舗で販売する者のやりがいにもなる。関根店長によると、ネットで知識を蓄えてくる客に補助的な解説ができるよう、店員の教育に力を入れるのも近年の傾向だ。「アドバイスはホームセンターでもやっていないでしょうから」。カルスのリピーター率は高いという。
ネットの活用とリアルでの応用。この流れで来年もヒット商品が生まれるのだろう。