今年6月に惜しまれながら閉業した塩尻市大門一番町の老舗銭湯「桑の湯」が12月30日、再オープンする。店長になるため東京から移住した相良政之さん(26、同市広丘高出)が、年末年始の開店準備に奮闘中だ。
桑の湯は1929(昭和4)年に創業。地域に親しまれたが、設備の老朽化などで閉業した。地元住民らの存続希望の声を受け、後継者を公募。複数の応募から選考を経て、全国で銭湯代行業を行っている静岡県伊東市のニコニコ温泉株式会社が、事業を引き継ぐことになった。店長となったのが、同社の相良さんだ。
「桑の湯を多くの人に知ってほしい。“ゼロ歳から200歳まで”幅広い年代に親しまれる銭湯を目指します」と話す。
存続希望の声に自分が守りたい
桑の湯再開に向け、連日作業をしている相良政之さん。毎日のように通りがかった人から、「いつ開くの?」と声をかけられるという。「うれしくて、作業の手を止めて中に上がってもらって、桑の湯案内ツアーをしてしまいます」と笑顔を見せる。
銭湯が好きで、2018年にエンジニアから同社に転職した。東京や大阪などで廃業した銭湯の復活に携わった実績があり、現在は5店舗の統括マネジャーを務めている。
全国の銭湯を巡る中で桑の湯を訪れたことがあり、もともと「大好きな銭湯の一つ」。昭和の建具や、開放感のある天窓が付いた浴場が、いつでもぴかぴかに磨き上げられ、地元のお客さんのために愛情を持って営業をしている姿に、感銘を受けていた。閉業のニュースを受け、「ここをなくしちゃいけない、自分が守りたい」と公募選考に参加した。
これまで人口の多い大都市で銭湯の再生を手がけてきたが、地方都市は初めて。まきで沸かす平釜も初めてで、自分自身への大きな挑戦でもある。
「新旧の融合」にこだわりの内装
内装は全て新しく作った方が費用がかからないが、これまで使っていた番台や靴箱、ロッカー、脱衣所の鏡など、大事に磨いて使われていた昭和の建具を生かした設計を、地元の住まい考房(塩尻市大門七番町)に依頼し、新旧の融合にこだわった。水道や電気工事、内装も地元の企業に依頼。今後も利用客の要望に応じて改装を加える方針で、30年後も銭湯として存続することが目標だ。
寒かった脱衣所にエアコンを入れ、トイレは和式から洋式に換えるなど、より快適な設備作りにも力を入れた。番台の前のロビーには5千冊の漫画と200冊の絵本を置き、入浴後もくつろげるスペースを作った。「ついつい来たくなる桑の湯にしたい」と相良さん。
30日は午後3時に開店する。同日から開店イベントを行い、年末年始は6日まで休みなしで営業する。
営業時間は午前5時から翌日午前1時まで(午後1~3時は清掃のため閉める)。火曜定休。入浴料金は大人500円、小学生170円、6歳未満80円。駐車場は平面12台と市営立体駐車場(3時間無料)。スタッフも募集中。問い合わせは同店=インスタグラム=から。