サッカーJ3松本山雅FCの本拠地、松本市神林のサンプロアルウィンで12月25日、改修工事で取り外された座席が希望者に引き渡された。自宅での観戦用に、日曜大工で建てる小屋の家具に…。四半世紀の間、野ざらしで観客の体を支えてきた座席が、さまざまな役割を担うべく第2の居場所へ引き取られていった。
サンアルではこの冬、2001年の開場後に初めて、バックスタンド中央部の座席を取り換える工事が行われている。古い座席は所有者の県松本建設事務所が1人2席までの条件で譲渡先を募り、2180席に対して1181席分の応募があった(締め切り済み)。
引き渡しは今月と来月の4日間で行い、この日が初日。取り外された座席がバックスタンド裏のコンコースに並び、受け取りに来た人がじっくりと選んだ。
上田市から来た中澤洋さん(59)は背もたれに「77」と「88」の座席番号が付いたものにした。父の良(よし)精(あき)さん(91)は元県サッカー協会理事で、サンアルの建設にも尽力したという。「自宅でこの座席に座り、2人で山雅の試合をテレビ観戦したい。最高のクリスマスプレゼント」とほほ笑んだ。
伊那市の井上和久さん(48)は、息子の誕生日にちなんで「23」にした。サンアルで2人で初めてサッカー観戦をした思い出があるという。息子はもうすぐ20歳。「この座席を庭に置き、お酒を飲みたい。息子も喜ぶと思う」と目を細めた。
松本市内の50代の男性は「3」が付くものを選んだ。この背番号を付けてプレーした2人の元山雅選手、故松田直樹さんと田中隼磨さんへの思い入れからだ。
長野市から来た男性(74)の場合は材質重視。「20年以上壊れずにいるんだからすごい。山の隠れ家に置く」と頼もしげに見つめた。