【特集・松本の街】懐かしい風景ー昭和から令和 写真で楽しむ

収集した写真集を持つ大久保さん。手前の写真集に貼られた付箋は、実際に行った場所の写真が掲載されていることの目印だ

「これが今できる、過去へのタイムスリップです」。こう笑顔で話すのは、約20年前から、昭和時代の松本市の風景写真やそうした写真が掲載された写真集などを収集している同市井川城の小学校教諭、大久保剛さん(59)だ。当時の写真や地図などから手がかりを見つけて現地を訪れ、その場で「今昔」を確認するのが「何より楽しい」という。

収集家の大久保さん「気軽にタイムスリップ」

友人や知り合いなどに会うたびに、自分の趣味を伝え、「そういう写真があったら見せて」と懇願。約20年間で目にした写真は千枚以上。写真そのものを譲ってもらったり、紙焼きの写真を撮影してデータで保存したりしている。
また、「気軽にタイムスリップするには写真集が一番」と、古書店などを探索。「お宝」を見つけると購入する。そうして集めた写真集の中で一番のお気に入りは、松本市にかつてあった郷土出版社が1980年に発行した「写真集松本いまむかし」。「千歳橋の見える風景今昔」「松本城周囲の景観今昔」などの項目に分かれ、解説付きで収録された写真は550枚。「本当に貴重でいい写真ばかり」と大切にしながら、今でも頻繁にページをめくり、自分の記憶を呼び起こしている。
最近のマイブームというのが、「手作り今昔物語」。松本駅前や伊勢町通り、六九商店街、四柱神社周辺など、自身の幼少期から青春時代にかけ、刺激を受けたり、特に思い出に残ったりしている場所を訪れ、昔の写真と照らし合わせながら、現在の風景をスマートフォンで撮影。「今昔」の2枚の写真を合成し、コメントを添えてメールで友人らに見せている。

両親を早くに亡くしたという大久保さん。「昔の写真を見ると、家族との思い出がよみがえってくる」と、こうした趣味を始めたきっかけをしみじみ語る。そして「青春時代によく行った場所は今、どんな景色になっているか。探検気分で巡ると、新たなどきどきするような情景が広がっていることがある。その発見が楽しい」とも。セピア色の1枚の写真が、人生に彩りを与えている。

1973(昭和48)年の松本駅前
1976(昭和51)年の松本駅
1977(昭和52)年の新伊勢町通りの入り口付近
1984(昭和59)年の井上百貨店前