1975(昭和50)年。松本市を拠点にした男性フォークデュオ「万華鏡」が本格活動を開始した。デビュー間もなく市内で開いた単独コンサートで千人以上を動員。若者から大きな支持を集めた人気グループだ。
半世紀を経た2024年末。グループのファーストアルバムであり、ベストアルバムでもあるCD「万華鏡Best Album Since 1975」を発表した。2月15日には、発売を記念し約6年ぶりのコンサートを開く。
古希を目前にした万華鏡の二人。「一人でもファンがいてくれる限りは歌い続けたい」と意欲的。アルバムは「集大成であり、新たな出発点でもある」と自らを奮い立たせる。あの時のぞいた万華鏡の輝きが、さらに増していく。
古希目前に意欲 同世代に勇気
男性フォークデュオ「万華鏡」のメンバーは、リードボーカル、ギター、キーボードの宮渕泰秀さん(69、松本市出川)とサイドボーカル、ギターの赤廣伸夫さん(68、同市村井町北)。
今回発売した「万華鏡 Best Album Since 1975」は、17曲入り。音楽仲間らから、「活動50周年にもなる。これまでの作品をちゃんと残した方がいい」と背中を押され、4、5年前から制作を開始した。
1976年に発表した宮渕さん作曲の「今日のルージュは」は、恋する女性の切ない女心を歌った。この作品で万華鏡は、プロミュージシャンへの登竜門とされた「ヤマハポピュラーソングコンテスト」に初挑戦。翌年には別の作品で本選まで進み、「あんたのバラード」でグランプリを獲得した世良公則&ツイストらと同じステージに立ち、頂点を目指したという。
78年発表の「晩秋の雨」は宮渕さんの補作詞・作曲。恋に破れた女性の心模様を、晩秋に降る雨の冷たさと重ね合わせた曲で、万華鏡の代表曲の一つだ。この年に当時の松本市民会館で単独コンサートを行い、1300人収容の会場に有料で約千人を集めたという。
一方、2000年代の曲も多数。19年発表の「雷鳥のように」(宮渕さん作詞・作曲)は、力強いロックナンバー。「てっぺん目指し羽ばたく雷鳥のように」と、多くの人に向けエールを送る。
「上弦の月が美しすぎて」は20年発表。宮渕さん自身もお気に入りという曲で、メロディーが美しい。
宮渕さんは「昔の曲も『あの頃の素直な気持ち』と思える。全体的に納得の仕上がり」と自信を見せる。
万華鏡は74年、松商学園短期大(現・松本大松商短期大学部)の同級生だった宮渕さんと赤廣さんで結成し、翌年から本格的な活動を開始。約10年間はアルバイトなどをしながら、音楽活動に軸足を置き、幾つもの音楽コンテストに挑戦するなどして「メジャーデビュー」を目指した。
「あと一歩のところまでいった」(宮渕さん)が、夢はかなわず。家庭を持つようになって、10年ほど万華鏡としての活動は休止した時期もあったが、個々の音楽活動は継続。約20年前から徐々に、グループの活動も行うようになった。
宮渕さんは「万華鏡はデビュー以来、解散したことはない。ようやくできた『ファーストアルバム』を機に、これから新たな万華鏡として活動を活発にするかも」と意気込み、「この年になっても、音楽活動ができることを同世代の人たちに伝えたい」と力を込める。
アルバムは定価2500円。発売記念コンサートは2月15日、松本市深志1の「MOLEHALL」で開く(午後4時開演。料金2千円)。問い合わせは松本ロフトTEL080・1116・2252