おどりは生活の中に人生はおどりのように─。そんなキャッチコピーの下、10~60代の市民8人がダンスのソロ作品を作り、劇場で発表する企画「おどりば vol.2」が、松本市内で進行中だ。参加者は小学生、保育士、古書店店主などさまざま。自分の体や心と向き合い、本番(1月18日、まつもと市民芸術館)で解き放つ。
抽象的な身体表現の魅力知った
昨年12月7日、市内の公民館で、赤間蓮理(れんり)さん(26、同市女鳥羽)が、メンター(相談役)として作品づくりに伴走するダンサーの二瓶野枝さん、矢萩美里さん、演出家の藤原佳奈さん(いずれも市内在住)の前で、踊りを披露していた。
公募で集まった参加者は、企画がスタートした昨年10月以降、メンター3人と個別リハーサルを繰り返している。
この日、赤間さんは事前に動きを決めずに3人の前で踊った後、感想に耳を傾けた。「私の意図しない動きが、誰かに何らかの作用を起こすかもしれない。それが面白いんです」と目を輝かせる。
参加のきっかけは、昨年8月に市内で鑑賞したダンスとギターの共演。鑑賞中よりも帰宅後にいろんな思いが湧き起こり、抽象的な身体表現の魅力を知ったという。
「動きの意味など考えず見てもらえたら。例えば、急に子どもの頃のことを思い出して『なんでだろう』と思ったり、鑑賞後に街行く人の腕の振りを見て『どこかで見たような…』と気になったりするかもしれない。それを面白がってもらえたら」
1週間後、まつもと市民芸術館で、参加者全員が集まって中間発表が開かれた=写真。
皆、自分で選んだ音楽を流して踊る中、松本市出身の越口花梨子(かなこ)さん(28、軽井沢町)は、ランダムに言葉を流し、感じたままに体を動かしていた。
「ストーリー性がないので『誰かに何か伝わるのかな』と不安になる時がある」と苦笑するが、「8人8様の中にいるので『自分は自分でいい』と思える」と力を込める。
23年開催の第1回おどりばに続き2度目の参加。「豊かな時間を過ごしている」と声を弾ませる。「自分の表現に対していろんなリアクションがあり、それによって今まで気づかなかった自分に出会う。そこに喜びを感じるんです」
「体は正直で、踊り手のことがよく表れる。これはプロダンサーも一般市民も同じ。踊りにそれぞれの色があって、見ていてぐっとくる」と、おどりばを企画した二瓶さん。藤原さんは「制作過程は、自分と向き合うと同時に『うそがつけない状態で他者と向き合う時間』でもあり、これがすごく貴い」と話した。
【おどりば vol.2】
1月18日午後4時、松本市のまつもと市民芸術館(深志3)小ホール。5時40分から、同館芸術監督の倉田翠さん(ダンサー)や出演者らのトークイベント。前売り2500円、高校生以下1500円、当日各500円増し、膝上鑑賞無料。予約は所定のフォーム=こちら=から。TEL090・8527・5520