大町市美麻の国重要文化財「旧中村家住宅」で1月7日、正月の伝統行事「巻き俵(わら)」があった。タケノコ形の俵の表面に新しい稲わらを巻き付けて飾り、家内安全や五穀豊穣(ほうじょう)などを祈る行事。大北地域の一部で古くから行われてきたが、今ではほぼ途絶えたとみられ、存続を願って市民や市文化財センター職員らが飾り付けた。
主屋にある茶の間の神棚の前につるされていた1対の俵を下ろし、それぞれの表面にわらを巻き足して形を整えた。俵は高さ1メートル20センチ、直径50センチほどで、重さは一つ30キロくらい。表面などに縁起物を飾り付け、再びつるした。
同住宅では、主屋が建てられた江戸時代から320年以上続くという。俵の芯近くに煙で黒くいぶされた300年以上前のものと推測されるわらが確認でき、歴史を感じさせる。
例年作業に携わる北沢孝一さん(74、美麻)は「出来はいい」と頬を緩め、「農作物の鳥獣被害が多い地域。巳(み)年だけに実がなる年になれば」。市文化財センターの勝野実所長(57)は「地域に伝わる行事をできる限り大事に残していきたい」と話した。
同住宅は3月末まで冬季休館中。