【ビジネスの明日】#68 Re.road社長 金井佑輔さん

eスポーツで社会課題解決を

「勢いで立ち上げた会社。ここまで大きくなるとは思わなかった」。こう語るのはコンピューターゲームの腕を競う「eスポーツ」事業の企画・運営をするRe.road(リロード)(松本市大手3)の金井佑輔社長(37)。創業から5年がたち「eスポーツを通じた社会貢献」を今後の目標にしている。
2019年、所属していた松本青年会議所(JC)の「街の活力創造委員会」委員長に就任。理事長から「若者と一緒に街を活性化する運動を」という指令があった。
当時は「eスポーツ」という言葉が出始めた頃。調べると「ゲームがスポーツの時代」で、松本では松本工業高校で部が発足したばかりだったことが判明。視察した。放課後、生徒たちが部室に集まり、ゲームに熱中。そして言った。「練習はできるけど、それを発揮する場がない」と。
同年7月、松本JC主催の大会を開催。反響を呼んだ。同時に先輩らから、「自分が企画した事業は継続を」と言われた。しかし、JCの任期は単年度制。「ならば自分で会社をつくって続けよう」と、立ち上げたのがRe.roadだ。
「ゲームがスポーツということに最初は違和感があったが、松工生たちのゲームに懸ける熱量はスポーツそのもの。意識が変わった」と振り返る。
その後、20年からはコロナ禍に突入したが、オンラインでも対応できる「強み」を生かし、月1回の定期大会を開催。都内のeスポーツの専門学校から、イベント運営のノウハウなどを教える講師の要請もきた。
こうした実績が買われ、大手企業が関わり数カ月に1度、1、2万人収容の会場で開かれた全国大会の映像配信を担当することに。これをきっかけに会社も急成長を始めた。
会社に利益が出た22年から2年連続で松本市内で自主大会を開催。観客も全国から訪れ、地元に経済効果をもたらすことができ、ビジネスとして大きな可能性があることも分かった。
しかし、今後の一番の目標は「eスポーツで社会課題を解決」。23年から塩尻市と協働で始めた「シニアのeスポーツ講座」は認知症や介護の予防になると大好評。また、引きこもりの若者の居場所づくりとして活用することにも手応えをつかんでいる。
「ゆくゆくはeスポーツが公共サービスのようになくてはならない存在になれば」と高い志を掲げ、社名にちなみ「令和の時代に道を切り開きたい」。

かない・ゆうすけ
1987年、松本市松原出身。松商学園高ではサッカー部に所属。東洋大卒業後、都内のベンチャー企業で2年間勤務。地元に戻り、家業のコンサルティング会社に入社。2019年8月、Re.roadを設立し、社長就任。