松本の中3菅原柚月さんと小4の小郷さくらさん 伝統技法「型染め」に夢中

型紙を用いて布を染める伝統技法「型染め」。松本市の中学3年生の菅原柚月さん(横田)と小学4年生の小郷さくらさん(島立)は、その魅力に引かれて安曇野市穂高有明の「池野染色工房」(池野陽子さん主宰)で技術を学んでいます。昨年は念願の着物を制作し、展示会で披露しました。

時間を忘れて楽しむ 菅原柚月さん=写真

菅原さんが型染めを知ったのは小学6年生。松本市の友人宅で開いた着付け教室に参加した時でした。
そこで池野さんに師事する竹本凜佳さん(27)と出会い、12歳の時に型染めの着物を作った話を聞くと「自分も作りたい!」。すぐに工房に通い、池野さんに教わりながら着物制作に取りかかります。
絵柄は桜や梅などの花や葉、つぼみなどを自分で考え、大中小合わせた21枚の型紙を3日ほどかけて作りました。一昨年秋から、専用の道具で生地のしわを伸ばす伸子(しんし)張り、布への染着性を高める豆汁(ごじる)塗り、はけに染料を付けて生地に塗る引き染めなどを体験。自身がこだわり抜いた黄色に仕上がりました。
生地が乾くと仕立屋で裁断と仮縫いをしてもらい、24年4月に下絵に取りかかります。池野さんと相談しながらデザインの配置を決め、消える染料「青花」で下絵を描きますが、これが最も大変な作業。教室だけでは時間が足りないため自宅でも筆を走らせ、数カ月かけて仕上げました。
最後に絵柄を金彩で縁どる印金(いんきん)をして完成です。反物の準備や裏地の入手など、裏方で支えた母親の友子さんは「これだけのことを自分の力でやりきり、大きな財産になったと思います」。菅原さんは「染める箇所が多くて同じ色を作るのは難しかったけど、時間がたつのを忘れるくらい楽しかった。反物を好きな色に染められてうれしい。次は手描き友禅をやってみたいです」。

和の心親子で学んで 小郷さくらさん=写真左

小郷さんは、小学1年生の時に親子で参加した年初めの茶会「初釜」で、池野さん=写真右=が着付けを担当したことで型染めに出合いました。幼い頃からイラストを描くことが大好きで、池野さんが着物の染色家で手描き友禅師だと知り「わくわくした」。穏やかな人柄にも引かれ、その日のうちに「着物を作りたい」と伝え、快諾を得ました。
教室は1回2時間、月1回です。型紙で模様を付ける技法、デザイン決め、豆汁塗りなどを学び、やはり教室だけでは時間が足りず、筆を借りて家で作業しました。
そして23年9月に着物が完成。たくさんある作業工程の中で母・栄夏(えか)さんが手伝ったのは、印金だけです。「子どもに付き添いながら、和の心を学ばせてもらいました。大変な作業をよく頑張りました」
小郷さんは「(染める時に)型の上から真下にポンポン押すのが大変で腕が痛くなったけど、つらいとは思わなかった。将来は先生のように着物を作ったり、人に教えられたりするようになりたいです」と目を輝かせます。