「北アルプス材」日々の暮らしに「もりとくら」の取り組み

「北アルプス森とつながる暮らし案内所」(もりとくら)

紙やすりで磨いてバターナイフと小さなへらを仕上げる「キット」、多用途の小さな棒5本セット「角棒」や「角皿」─。大北地域で育った多彩な樹種を使った木製小物は、色や木目が個性的で表情豊か。“同郷のよしみ”か、親近感が湧く。
これらは、地元の林業関係者や木工家、建築士らでつくる団体「北アルプス森とつながる暮らし案内所」(略称・もりとくら)の独自商品だ。同地域産の「北アルプス材」を暮らしに取り入れ、身近な森に関心を持ってほしいと、昨春発足。11月には松川村にアンテナショップも設けた。
「エンドユーザーが暮らしで使うことも、地域の森づくりの大切な循環の一つ」と嶋田ふみ代表(45、同村)。森や人とのつながり、地域材活用の広がりに力を注ぐ。

森や人とのつながり大切に

県北アルプス地域振興局などによると、大北地域の民有林の7割近くは広葉樹が占める。地元の広葉樹は、曲がっていたりまとまった量がそろわなかったり。製材に手間がかかり、乾燥技術も研究途上だ。このため従来は、まきやチップなどでの流通が多かった。丸太のまま県外に出回るケースもある。
輸入木材価格の高騰「ウッドショック」などを背景に、輸送費用の面からも、近年は地域材の注目度が高まっている。同振興局では2021年度から、広葉樹を含む地域材活用に向けた円卓会議を開催。その参加者らが、つながりを深めて発展し、「北アルプス森とつながる暮らし案内所」(略称・もりとくら)が発足した。

地域材の活用へ作家ら有志集う

「もりとくら」は、大北地域や安曇野市の18人で活動する。「まきやチップにだけしてしまうのは、もったいない」「地域材を商品などに使いたい」。メンバーの林業関係者と、木工家ら作り手の思いは同じだ。広葉樹の製材や乾燥に創意工夫を凝らしつつ、北アルプス材を積極的に使い、多彩な家具や小物が誕生している。

創意工夫凝らし4商品を展開中

北アルプス材活用の動きや可能性を知ってもらい、裾野を広げて需要を高める活動の一つとして手がけるのが、材を有効活用した独自商品の開発と制作だ。「シンプルに暮らしに取り入れてほしい」と、デザイン性は控えめに、価格もなるべく抑え、メンバーの木工家らが仕事の合間に作りやすい、シンプルな工程にした。現在は4商品を展開し、今後もアイテムを増やす計画だ。
家具・木工製品製造販売「ソルンテシマダカグ」(松川村)ショールームの一角に設けたアンテナショップには、もりとくら独自の商品の他、メンバーの木工家や職人らが手がけたペッパーミルやアクセサリーなど小物も並べた。少量だが板材も扱う。写真や映像で、林業の現場や製品になるまでの流れも紹介している。「産地が分かる品からは、木のストーリーも感じられる。顔の見える流れで、出来上がったものをぜひ暮らしに」と、代表の嶋田ふみさん。
地元で育つ広葉樹の幹や木材を、ディスプレーやパーティションに活用し、樹種が豊富な北アルプス材を身近に感じられる空間を演出した。活用の相談にも応じる。
嶋田さんは、夫とソルンテを営む作り手。「エリア外も含めてプロの作り手にも、北アルプス材が使えることを発信したい」といい、今後は用材をスムーズに購入しやすい情報発信や、流通の仕組みづくりにも力を入れていく。

独自商品は、自分で仕上げるバターナイフとミニヘラのキット(2640円)、角棒(5本1430円)、角皿・小(2枚2200円)、角皿・大(2860円)。アンテナショップの営業日などはインスタグラムに。もりとくら(ソルンテ内)TEL0261・85・6899