
「小料理いとう家(や)」(松本市中央2)が3月29日、閉店する。2003年5月にオープン、地元の人だけでなく、県外、海外からも多くの人が訪れ、親しまれた。店主の伊藤久美子さん(67)が手を痛め、やむなく決断したといい、惜しむ声が上がっている。
おでんが名物で、鍋、一品料理などを提供する。16年ごろから外国人客が増え始め、17年には入り口に英語版のメニューを置くなど工夫してきた。同年には県の第4回信州おもてなし大賞で奨励賞を受賞。翌18年には、旅好きの口コミで選ぶ「外国人に人気の日本レストラン2018」でトップ30にランクインした。
順調だったが、20年の新型コロナによる緊急事態宣言で、客足が一気に遠のいた。国の補助金でパーティションを置いたり、空気の循環器を取り付けたりとコロナ対策を実施。昨年、ようやく売り上げが戻ったが、忙しさが手の状態を悪化させた。
「親指の付け根に違和感があった。5月の連休は乗り切ったが、10月には動かしたり重い物を持ったりすると痛みを感じるように。11月には常に痛くなった」と伊藤さん。
70歳くらいを定年と決めていたが、「動かさないのが一番の治療」と医師に言われ、「潮時かなと思った」という。閉店が知られると「やめないで」「松本に住んでいる意味がなくなる」などの声が届いたという。
「新たな人生に向かうための引き際」と伊藤さん。閉店後は趣味の三味線、パソコン、フィットネスなどに力を入れるという。「(松本城で外国人をボランティアで案内する)アルプス善意通訳協会の幽霊会員だったので、勉強をし直しデビューしたい」
伊藤さんは「お客さまが店の雰囲気をつくってくれた。感謝しかない」と22年間をしみじみとかみしめる。
いとう家TEL0263・32・3826