
お薦めの本の魅力を語る書評合戦「ビブリオバトル」の第8回全国中学決勝大会(3月9日、京都市)に、塩尻市の丘中学校1年・林なのはさん(12)が県代表として出場する。昨年11月に同市塩尻総合文化センターで開かれた県大会で優勝。「ビブリオバトルで本の世界が広がり、ますます読書が好きになる」という。
「伝える心遣い」学んで
取り上げた本は、漫画家・小説家の歌川たいじさんが実体験をつづった「母さんがどんなに僕を嫌いでも」。家庭や学校で壮絶な暴力を受けた少年が、1人で社会に出て自己否定を克服していく過程を描く。
メインテーマは母親との関係だが、林さんはあえて児童虐待や、いじめの内容に焦点を当てた。「いろんな人に現実を知ってほしいと思った」と林さん。いじめている人、傍観している人に、むごさに気づいてほしいという思いがある。
県大会を振り返り、「言うことは言った、やりきった―という感じ。でも、まさか1位とは」とはにかむ。同じ本で臨む全国大会に向け、「もっとたくさんの人、ちっちゃい子にも分かるように、表現を直したい」。
吉田小時代にビブリオバトルに出合い、興味を持ったという林さん。「自分が紹介した本を『読みたい』と言ってもらえると、心がほかほかする。友達の意見を聞くと、新しい視点から読み直せる。友達の考えも感じられる。どんどん興味が広がる」と楽しそうだ。
「でも国語は苦手」と苦笑い。教科書が示すように人物の感情を読み取るのは、難しいという。音楽も好きで、吹奏楽部でトランペットを吹く。ビブリオバトルで学んだ「伝える心遣い」を生かしたいという。
最多得票「チャンプ本」
ビブリオバトルは、2000年代半ばに考案された読書会の一形式。参加者は持ち時間5分で本を紹介し、それぞれの発表後に全員で討論する。全ての発表の後で、読みたくなった本に1人1票を投じ、最多得票の本を「チャンプ本」と称する。
塩尻市は、21年につくった「第3次市子ども読書活動推進計画」で、学校でのビブリオバトル実施を盛り込んだ。中学の県大会では、昨年度も両小野3年(当時)の横沢たまきさんが優勝しており、塩尻勢が2連覇した。
ただ本年度の県大会出場者は、林さんら丘中生3人だけ。寂しい状況だが、10年ほどビブリオバトルに関わる同校学校司書の上小澤久美子さんは「図書館に『この本を入れてほしい』という要望が増える。私たちが紹介するよりも、同世代からの紹介の方が読みたくなる」と、その効果を実感している。