
安曇野市豊科郷土博物館友の会が、小学生とその家族が参加する部として2018年に発足した「タカラさがし部」。自然観察や牧場見学、ラジオの組み立てや古墳発掘調査の体験など、地域に根差した自然や文化に触れ、体験を楽しんでほしいというコンセプトの下、月1回活動しています。昨年12月、堀金公民館で行った調理実習を取材しました。
本年度は市内の25家庭60人が参加。同館職員や市内小学校の教員など約20人が企画・運営に当たっています。
今回のメニューは、郷土料理の「かぼちゃ団子」と「田作り」です。最初に元博物館職員で民俗研究家の倉石あつ子さんが、中信地方の食文化などについて解説。「冬至にカボチャを食べるのは、1年で一番日が短くなる日に、色鮮やかな野菜で太陽の力をいただく意味があったのかも」と話しました。
その後、数人ずつの班に分かれて実習へ。レシピにはあえて詳細な時間や分量は書いてありません。
かぼちゃ団子では、子どもたちが慎重にカボチャを切って鍋に入れ、「水はこのくらい?」「火が強い?」などと言いながら、自然に協力・分担して進めました。小麦粉をこねて作る団子は、軟らかめから硬めまでさまざま、形も違います。
田作りの小魚をいるフライパンからは香ばしい匂いが漂い、たれを絡めるとつやつやに。孫と参加した祖母の手際の良さに感嘆の声が上がったり、雑談で出身地の年越し料理の違いに驚いたりとコミュニケーションも生まれていました。
倉石さんは「料理で一番大切にしてほしいのは『感覚』。水加減や甘さしょっぱさ、調味料を入れるタイミングや温度、火の通り具合など、実際に見て感じて味見した上で加減する挑戦ができたと思います」。また、「家庭料理の出来上がりは少しずつ違うけど、みんなおいしい。それが家庭の味になる」と言いました。
参加した久保田花さん(豊科北小学校1年)は「田作りがおいしかった」、母雅子さんは「リンゴ狩りやマウンテンバイクなど、体を動かしたり食べたりできる活動が楽しいようです。家ではやることも多く忙しいので、ゆっくり子どもと向き合えるこの時間は貴重です」。
曽根原斉太朗さん(穂高北小2年)は「家や学校で食べるかぼちゃ団子より、自分たちで作ったのは甘かった」、父秀太朗さんは「子どもに地域のことを知ってもらいたいと思い参加しました。小学校の先生たちがいてくれるので安心だし講座も面白い。毎回自分も発見や学びがあります」。
タカラさがし部部長で同市文書館職員の千村裕一さんは、学校でも郷土について学ぶけれど、ここまで準備や時間を割けないと言います。「子どもには難しい内容があるかもしれないけれど、大きくなって『あそこにみんなで行ったよね』『そういえば話を聞いたな』など、古里を思い出す手掛かりになればうれしい。何より目を輝かせ、わいわいと楽しそうな様子を見られるのが一番です」。
【タカラさがし部】5月~翌年2月まで月1回、土曜日の午前に活動。フィールドワークを中心に屋外、長時間のため親子一緒の活動が原則。年会費は大人1000円、子ども500円(活動によって機材レンタル・入場料・材料費など若干の実費が必要)。募集は4月に市内の小学校を通じて行う。