松本の服飾デザイナー井口彦宗さん ブランド立ち上げ世界目指す

「幅広い年代に」ネット販売

服飾デザイナーの井口彦宗さん(23、松本市征矢野2)は昨年、メンズのファッションブランドを立ち上げ、自身がデザインした服をインターネットで販売している。世界の注目を集めるデザイナーを目指し、オーダーメードのジャケットや一点物の女性のワンピースなどの制作も手がけている。

一点物やレディースにも力

そのデザインは、繊細だったり“はかなさ”を取り入れたり。アイテムは、カジュアルでシンプルなのが特徴という。「ジェンダーフリーが言われる中、メンズで『きれいなデザイン』を目指している」と井口さん。
現在販売しているのは、ニット地のフーディー(フードが付いた衣類)とパンツ。ゆったりしているので着やすく、動きやすそうだ。デザインのターゲットは20~30代だが、「幅広い年代に着てもらえる」と自負する。
ブランド名「GEORGESROW」は、ピカソらとキュビズムを創始したフランスの画家ジョルジュ・ブラック(1882~1963年)と、伝統あるテーラーが並ぶロンドンの通り「サヴィル・ロウ」にちなむ。

「ファッションに興味はなかった」が、制服がない塩尻志学館高校に進学して目覚め、「洋服は誰もが常に身に着ける生活の一部」と、文化服装学院(東京)へ。「映画やドラマで、俳優は役に合う物を着ているなど、洋服が人の印象を変えることも後押しした」
2年次に服の制作から販売まで携わるコースを選択し、卒業後に「作る側に行きたい」と服装科で2年間学び直した。加えて進学科(1年)で主にパターンを学ぶ技術専攻を選び、計5年間ファッションをみっちり学んで昨春、松本に戻った。

服のデザインは、シンプルにすればするほど、着る人にその特徴を伝えるのが難しい。一方で、複雑なデザインの服は着にくい。商品を作る上で、そんな難しさを感じている。ネット通販のため、手に取ってもらいにくいのも課題だが、「資金などメンズで力を蓄え、次はレディースに進出したい」。
今は、日本独自の技術で「スカジャン」などに用いられる「横振り刺しゅう」を施した一点物のドレスを制作中。「歌舞伎などの日本の伝統も、デザインに継承していきたい。いずれは(世界の流行をリードする)パリコレクションに参加したい」と夢を語る。