拝殿倒壊 塩尻の玄蕃稲荷神社に新たな祠 住民の思いが形に

民話に登場する伝説のキツネ「玄蕃之丞(げんばのじょう)」にゆかりがある、塩尻市広丘野村の玄蕃稲荷神社の祠(ほこら)(本殿)が新たに造られた。古い拝殿は昨秋倒壊したが、中の本殿が残っていたたため、住民らの間で「小さい祠でもいいので建て直そう」との声が上がり、住民から寄付を募って実現した。
新たな祠は高さ1メートル、幅60センチ、奥行き90センチほどで、総ヒノキ造りの銅板ぶき。高さ80センチ近い石の台座に載せ、拝殿があった場所の南の九里巾集会所隣に設置した。キツネの像や灯籠も旧拝殿の境内から移し、昨年12月19日に遷宮祭を行った。
神社再興発起人会の世話役を務めた星英夫さん(75)によると、同神社は天文年間(1532~55年)に武田氏との戦いで使者に化け、小笠原氏のために功績を上げたとされる玄蕃之丞を祭り、五穀豊穣(ほうじょう)、商売繁盛の神として大正時代の初めまで多くの参拝者でにぎわった。1915(大正4)年に焼失し、33(昭和8)年の広丘駅開設を機に再建した。
近年は毎年9月の例祭に合わせ、住民が境内の草刈りなどをしてきた。拝殿は老朽化で6年ほど前から立ち入り禁止にしていたが、昨年9月に倒壊。その後、住民有志で発起人会を組織して地区内で寄付を募り、約750戸から120万円ほどが集まった。
星さんは「早速、さい銭を上げてくれる人があり、うれしい。小さくても人が集まる神社になれば」と話し、今後さい銭箱や案内看板の設置などを検討するという。