【ビジネスの明日】#69 トータス社長 伊原遼太さん

「自分も含め、社員が幸せな家庭を築ける会社を目指したい」。こう話すのは、カッター工事や非破壊検査などを手がけるトータス(山形村)の伊原遼太社長(37)だ。特殊技術を有する職人らのまとめ役を担う若き2代目は、理想の会社像を目指して奮闘している。

県内で信用社員の幸せも願い

主力にするカッター工事は、水道工事などの際、アスファルトやコンクリートを必要な部分だけ切ったり、穴を開けたりする。
非破壊検査は、コンクリート造りの工場などを改修する際、エックス線を用い、壁の内部を調査。穴開け工事などの適切な場所を正確に探る。
同社には営業部門がないため、仕事はこれまでの実績や信用度から、発注元から依頼されることがほとんどだ。「どの部門の仕事もまんべんなくいただき、仕事量は、徐々にではあるが右肩上がり」とし、特に県内は、こうした工事の価値を分かってくれるお客が多いといい、「現場に出ている職人らの、仕事に対するモチベーションは高いのでは」と見ている。
一方で、仕事を受けていない現場で、トラブルやアクシデントが発生し、突然、こうした工事などが必要になった場合でも対応できる態勢を整えており、「『トータスに頼めば何とかなる』といわれるような、機動力も大きな武器です」と胸を張る。
また、「地元の役に立ちたい」と、仕事をできるだけ県内に限定してきたことが、信頼を深める要因にもなった。

父で現会長の甲一さん(69)が1989年、「松本カッター」として創業した。
高校卒業後、大学に進学し、経営学を学んだが、最も熱中したのは演劇。学校の演劇サークルのほか、劇団にも所属。海外公演も経験したという。
「将来は演劇の道も」という考えはあったが、ある有名劇団の入団試験を受け、最終選考で落ちたのを機に、その道はきっぱりと諦めた。
「子どもの頃から、幸せな家庭をつくるのが人生の目標だった。演劇にしがみつくより、会社勤めなどの方が、目標に近くなると思った」
大学卒業後、住宅メーカーに就職し、営業を担当。2年後、タイミングもあり、トータスに入社した。
現在、職人や海外からの実習生ら、30人近くを束ねる。自身の人生目標を社員らにも実現してもらいたい思いは強く、「この会社で働いて、幸せの母数を増やしてほしい」。

いはら・りょうた 1987年、塩尻市広丘吉田出身。松本工業高校から、大阪商業大に進学。2012年トータス入社。20年、社長就任。松本市在住。