
画家の視線と生涯伝わる
19世紀末フランスを代表する画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864~1901年)の作品を紹介する「フィロス・コレクションロートレック展時をつかむ線」が松本市美術館(中央4)で開催中だ。素描やポスター、雑誌の挿絵など約240点を展示している。4月6日まで。
ロートレックは南仏の伯爵家に生まれ、幼少期から絵画に親しんだ。13歳で左脚を、14歳で右脚を骨折し下半身の成長が止まり、絵画に専念した。
ベル・エポック(美しい時代)と呼ばれた19世紀末から20世紀初頭のパリ。20歳の頃からパリの歓楽街モンマルトルにアトリエを構えたロートレックは、キャバレーやダンスホールに通い、歌手や芸人などと交流しながらその姿を描いた。過度な飲酒と乱れた生活で心身を病み療養の末、36歳で没した。
展覧会は、馬や人物などのスケッチやポスターのための習作、完成品に近い素描をはじめ、モンマルトルでの生活で人気歌手を描いたポスター、晩年の直筆手紙まで画家の視線と生涯を伝えている。
素描はすべて一点物。また、ロートレックの代名詞ともいえるポスターは、約30点制作されたうちの21点を展示、店名などの文字が入る前の貴重な刷り作品も見どころだ。
単に正確に描くのではなく、時には歌手の薄い唇や高い鼻といった特徴を誇張するなど表情や内面的な部分を捉えた作品も多く、そのイメージがポスターや雑誌で広がることで歌手を著名にしたロートレック。描かれた人々の喜怒哀楽からは、当時の大衆文化の熱量も伝わってくる。
同コレクションは、ギリシャ人コレクターのベリンダとポール・フィロス夫妻が20年以上をかけ収集し、ロートレック紙作品の個人コレクションとしては世界最大級といわれる。日本でのコレクション展は初。東京、札幌、松本の3カ所で開き松本が最終会場だ。
担当学芸員の大島武さんは「ロートレックがその時代に何を見て何を感じたのか、その息遣いを感じることができる展覧会。19世紀末の代表的な画家を知ってもらう機会にもなれば」と話す。
4月6日まで、松本市美術館。午前9時~午後5時。月曜休館(2月24日は開館し25日休館)。大人1600円、大学高校生1100円(電子チケットは各100円引き)。学芸員によるギャラリートークは2月6、27日、3月13日午前11時から。無料(当日有効の観覧券が必要)。先着15人(申し込み不要、企画展示室前に集合)。℡0263・39・7400