四賀地区に地域交流の場を 会社事務所がカフェバー兼ね開業

カフェバー&トークラウンジ tocoroni,(トコロニ) 松本市

かつて信濃の南北を結ぶ善光寺街道の要衝として栄えた、松本市四賀地区の会田宿。現在は人通りが多いとは言いがたい。だが─。
寒さがこたえる昨年12月、夜の会田地区。真っ暗な夜道を明るいライトが照らす。建物の中では大勢の人々が笑い合っている。何だか楽しそうだ。
開業したのは、カフェバー&トークラウンジ「tocoroni(トコロニ),」。建築設計・デザインなどを手がける会社「アルトコロニ,デザイン」(吉野歩代表)が事務所を開くのに伴い、昭和初期の木造住宅を改装、交流もできる場所にした。「地元の人や子どもたちが立ち寄る、にぎわいの場をつくりたかった」という。

開放的な空間でイベントなど開催

ガラス張りのカフェバー&トークラウンジ「tocoroni,」に入ると、卓球台がある。「何でだろう?」と思うが、「何かのきっかけになるんです」と、運営する「アルトコロニ,デザイン」代表の吉野歩さん(34)。集まった人たちが卓球をしたり、台にして食事をしたり…。
開放的なスペースで年始は餅つき大会を開き、地域の人たちが集まり大にぎわいだった。月に1度開くトークイベントは、初回の昨年12月23日は約20人が参加した。奥にはカフェスペースとして、ゆっくりくつろげる空間も。普段は事務所だが、営業日はカフェとして利用できる。

二人で会社興しにぎわいの場を

「アルトコロニ─」は吉野さんと、四賀地区にある古民家カフェKAJIYA(松本市五常)のオーナー石井裕士さん(42)が、昨年6月に設立した。建築設計デザイン事務所として、内装デザインや設計施工を手がける。
吉野さんは建築系の大学院で学んだ後、東京の設計事務所に勤務。地域のために、自分のデザインを生かすプロデュースに関心があった。2019年に宿泊施設運営や出版の自遊人(新潟県)から声がかかり、松本市浅間温泉の老舗旅館の再生プロジェクト「松本十帖」のマネジメントに関わった。
「浅間温泉は以前と比べ、人通りや雰囲気が変わったと実感している」といい、四賀地区も「場所や環境は違うが、リンクするものがある」とみている。
一方、石井さんは、一棟貸しの宿や、ドライフラワーと雑貨の店も中信地方で営んでいる。東日本大震災をきっかけに12年に千葉県から移住し、翌年にKAJIYAを開いた。実際に暮らしてみて「もっとにぎやかくなれば、さらに住みやすくなるだろう」と感じていた。
意気投合した二人は、地域づくりについて話し合い、KAJIYAでトークイベントなども開催。吉野さんが独立するタイミングで、「今後ますますにぎやかになれば」と会社を興した。
「四賀には個性豊かで面白い人がたくさんいる」と吉野さん。地域の人たちが持つ魅力と可能性に引かれたからこそ、この場所を選んだ。石井さんも「何を考え、何をやるのか興味深い人が多い。だから四賀の人たちと、一緒に何かをつくっていきたい」と話す。
大きなキッチンがあるカフェスペースや、オープンな空間は今後、貸しスペースとしてイベントなどで活用できる。
「tocoroni,」は、毎月第2、第4金・土曜の午後1~10時に営業。トークイベントは第4土曜を基本に開く。入場無料。問い合わせは吉野さん℡090・8592・9943