難病で入院する子の親をサポート 県立こども病院で弁当販売「ランチテラス」

「こころとからだに栄養を」

孤独や不安を抱え、自分の時間もなかなか取れない─など、難病で入院する子どもの親は、多くの困難に直面する。売店でパンを買う、レトルトで済ます─など、食事もその一つだ。
県立こども病院(安曇野市豊科)で活動する団体「付き添い入院家族応援ネットワーク『ランチテラス』」は、週4日の昼時に、賛同する飲食店と協力し院内で弁当を販売。親たちの食事を手助けする。3月からは、一般の人が「おうえんチケット」を買い、親が弁当を買う際の経済的・精神的支援につなげる方法を計画中だ。
子どもが難病で入院、付き添いの経験がある小畠(こばたけ)千奈都(ちなつ)代表(39、同市豊科)は「食を通して健康と元気をプレゼントできたら」と力を込める。

当事者として同じ親の力に

県立こども病院の外来棟1階エレベーターホール前廊下。「長野県立こども病院付き添い入院家族応援ネットワーク『ランチテラス』」は、毎週火~金曜の午前11時半~午後1時、開店する。日替わりで弁当、パン、スイーツなどを提供する。
弁当には不足しがちな野菜を多く入れたり、彩りをきれいにしたり。付き添い家族、医療従事者の「こころとからだに栄養を」をモットーにしている。
生後6カ月の子どもの入院に付き添う30代の母親(長野市)は「食料の調達は売店のみで、食べたい物が売り切れのこともある。カップラーメンやパンなど、日持ちする物を食べるしかない」。ランチテラスは毎週利用していたといい、「野菜がたっぷりで、作りたてのご飯が楽しみ。食べると心が和む」。
ランチテラスの小畠千奈都代表は11年前、息子が胆道閉鎖症という難病で生まれ、県外の病院で付き添い看病した経験を持つ。食事時間の確保が難しく、食べられる物が限られ、ストレスも加わり体調を壊したという。
2017年に長野県へ移住、県立こども病院に3回入院した。その際、食事支援をする団体の弁当を口にした。「幸福感に満たされた。食事で笑顔になり、勇気をもらえ励みになった。余裕が出たら、自分と同じような親に何かできたらいい」。当事者だからこその思いだった。
付き添い家族をサポートする団体は幾つかあるが、外から状況が見えにくく、なかなか支援が届かないと感じていた。「地域の子育ての一つとしてできたら」。24年10月、活動を始めた。

チケットで支援 思いやり循環を

3月以降、地域での支援(寄付)の循環をつくりたいと、「おうえんチケット」制度を始める。賛同する店舗などにチケットを置き、訪れた人が200円で購入。チケットは200円券となり、贈られた付き添いの親がランチテラスで使えるシステムだ。チケットの裏にメッセージを書いて、応援の気持ちを伝えられるようにもする。
現在、ランチテラスを運営するのは7人、パートナー店舗は15店。その一つ、KAJIYA(松本市五常)オーナーの石井ゆかさんは「家を離れ入院の付き添いをする親の気持ちを考えると、胸が締め付けられる。たくさんの野菜と手作り調味料を使った食事で、心身共に元気になってもらいたい」と力を込める。
病児や医療ケア児の親─多くは母親─は、仕事をすることも難しい。一般の人がチケットで応援したり、支援を受けた親が退院後、支援する側に回ったり。小畠さんは「こうした“思いやりの循環”ができればいい。温かい社会づくりの一つとして続けたい」。
国際小児がんデーに合わせ15日には、ハカルAZUMINO(安曇野市豊科)で、レモネードスタンドを実施。売り上げの一部を県立こども病院小児がんセンターに寄付する。1口(千円)でランチテラスのサポート会員になることもできる。申し込み、問い合わせはインスタグラム=こちら=から。