
自分から何かを言い出すことが苦手で、相手から聞かれないと答えられないというお子さんがいます。教室の中で、困っている様子を先生が見つけて声をかけられれば何とかなりますが、表に出さず静かに一人で困ったままでいる…というのはよく起こりそうです。自分のタイミングで意思を表出して相手に伝える練習をしていくためのステップとして、カードを使って意思表示をするやり方があります。
例えば「トイレに行きたい」とか「質問したい」とかを、授業中に挙手して先生に言うのはちゅうちょしてしまう場合、授業中に先生に言いたいことを、あらかじめ絵カードにして筆箱の中などに入れておきます。言いたいタイミングで机の上に出しておくことで意思表示とするのです。
このようなカードを先生が用意してくれたり、いつ使ってもいいんだよと先生から明言しておいてもらったりすること自体が安心にもなります。カードでの意思表示を口で言うのと同等に対応してもらうことで、先生とのやりとりが成立し、「こういうやりとりをこの先生としても大丈夫だった」という経験を積むことで自信になります。また、こういうカードのやりとりを重ねていくうちに口頭で言えるようになることもあります。
Aちゃんは引っ込み思案で緊張しやすく、人が多いところだと無口になってしまうタイプです。就学前の事前の支援学級の個別見学で、「授業中トイレに行きたいときはどうしたらいいですか?」という質問をしました。
先生は「『トイレに行きます』と言ってくれれば授業中でも行っていいですよ」と答えてくれましたが、Aちゃんは「でも、言えないかもしれない」と言いました。そこで先生が「絵カードで教えてくれたらいいよ」と提案し、授業中に言いたくなるかもしれないことのカードをたくさん作ってくれました。
入学後しばらくは緊張してなかなか自分から発言することができなかったAちゃんですが、困った時にカードを机の上に出すと先生が対応してくれるので、先生への信頼がどんどん増して、いつの間にか先生に話をしてくれることも増えていきました。