
チューリップの財津和夫さん(左)と話す新田さん(1970年代後半頃)
音楽プロデューサー新田さんと作家・今野敏さん 信毎メディアガーデンで
RCサクセションの故忌野清志郎さん誕生の瞬間や、長渕剛さんのデビュー秘話など、自身の体験を基にした「アーティスト伝説~レコーディングスタジオで出会った天才たち」(新潮社)を出版した、新田和長さん(79)。日本音楽界のレジェンドと呼ばれるプロデューサーだ。
この新田さんと、小説「隠蔽(いんぺい)捜査」などで人気の作家・今野敏さん(69)との対談が24日、信毎メディアガーデン(松本市中央2)で開かれる。
新田さんの初出版を記念した特別企画。数々のビッグアーティストを世に送り出した人だからこそ知る、天才たちの知られざるエピソードをじかに聞くことができる。
新田さんの元部下で、今回の対談の仕掛け人、佐久間雅一さん(67、軽井沢町)に、聞きどころなどを聞いた。
アーティスト 現場の視点から
佐久間雅一さんは、レコード会社・東芝EMI時代の新田和長さんの直属の部下で、新田さんが独立して創業したレコード会社ファンハウスにも参加した。現在は音楽製作会社ファイブナイン・ファクトリー(東京都)の社長を務める。
佐久間さんとの一問一答は次の通り。
─新田さんとの出会いは。
私が1980年に東芝EMIに入社した時の面接官だった。何も知らない私は、新田さんが当時手がけていたサディスティック・ミカ・バンドを「うさんくさい」みたいなことを言った。表情が一変した新田さん。「ミカ・バンドは俺がやってるんだよ。何だ、おまえその態度は」と怒られて面接は終わった。周りの人たちからは「佐久間君、残念だったね」と慰められたが、新田さんは拾ってくれた。そういう人です。それ以降、ずっと新田さんの下で働いた。今野さんは私の少し先輩で、私と同じように新田さんの下で働いていた。
松本だから披露小澤征爾さんの話
─この対談を松本で開く理由は。
できるだけ多くの人に師匠の本を読んでもらいたいので、私だけでなく、多くの元部下たちが手弁当でこうした企画を立てている。文化の香り高い松本でやりたいと思っていたのと、松本といえば小澤征爾さん。新田さんは小澤さんとも交流があり、日本のレコード会社で唯一、小澤さんのレコードを出している。そしてサイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)が始まった頃から、さまざまな形で応援している。そういったこともあり、ぜひ松本で開きたかった。
─新田さんは、この本をどういった思いで書いたのか。
音楽業界の重鎮と呼ばれる人たちがいろんな本を出している。その多くが、自分のことを書いている。新田さんは自分が携わってきたアーティストにスポットを当てた本を記録として残したかったらしい。アーティストをスタッフの視点から見て、小説ではなくノンフィクションとして、音楽の現場は「こういうものなんだ」と伝えたかったと思う。アーティストの話をしてくれているのが面白く、いい形で書いたと思う。
─対談の聞きどころは。
新田さんが手がけた、誰もが知っているような曲をかけながら、そのアーティストのエピソードを話してもらう。そして一番最後に新田さんが手がけた小澤征爾さんのレコードをかける。小澤さんとの出会いから、レコードを出すまでのことも話してくれるだろう。この話は他の場所ではしておらず、松本だから話してもらう。そこが一番の聞きどころだ。
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午後1時半開演。参加費1500円。問い合わせは、信毎松本本社まちなか情報局TEL0263・32・1150(平日午前9時~午後5時)
【プロフィル】
新田和長(にった・かずなが)
音楽プロデューサー。1945年横浜市生まれ。早稲田大在学中にフォークソンググループ「ザ・リガニーズ」結成。69年東芝音楽工業(後の東芝EMI)入社。東芝EMI第二制作部長時代の84年、30人の部員と共に退社しファンハウス設立。
今野敏(こんの・びん)
作家。1955年北海道生まれ。上智大在学中の78年「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞受賞。東芝EMI勤務を経て執筆に専念。2006年「隠蔽捜査」で吉川英治文学新人賞、08年「果断隠蔽捜査2」で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞。