
最後まで諦めず走り抜く
早川監督ら指導体制を一新 23日沼津とアウェーで初戦
今季のJ3リーグは2月15日に開幕する。松本山雅FCは日程編成の都合で初戦が1週先になり、23日の敵地アスルクラロ沼津戦で、J2復帰を目指して発進する。早川知伸監督(47)をはじめ指導体制を一新したチームは、どんなサッカーを見せるのか。新たにチーム強化の責任者に就いた都丸善隆スポーツダイレクター(SD、45)に聞いた。
─チームの準備状況をどう見ている?
始動からほぼ全ての練習を見てきた。早川監督の指導は、攻撃の時、守備の時、切り替えの時、それぞれの局面で何をやらないといけないかが非常によく整理され、伝え方もうまいと感じる。始動して1カ月余りで、もちろん選手に100%浸透する時期ではないが、確実に仕上がっていくという手応えを持っている。
─昨年12月の就任会見で、1対1の勝利数の少なさなどデータを挙げ、山雅の守備の課題を指摘した。
1対1の勝率は、単純に個々の守備能力によるわけではない。チームのバランスが崩れて相手にスペースを与えた状況での守備になると、難易度は上がる。そうではなく、よい距離感でポジショニングできていると、ボールを失ってもすぐ近くに味方がいて奪い返しに行ける。前線からのプレス、速いカウンターにつながる。
攻守の切り替え、攻撃と守備をセットにして考えるサッカーを早川監督は志向しているし、僕も同じ考え。
─霜田正浩前監督が残した良い部分の継承もポイントに挙げた。
攻撃で主導権を握り、意図的に崩していく志向は継承しつつ、質を高める。そのためにもチームのポジショニングが整っていることが大事。バランスが崩れると、簡単な失点も生まれる。
SD就任後、「昔の山雅の選手は試合で全てを出し切って、終わるとピッチに倒れ込んでいた」といった声をたくさん聞いた。早川監督とも「最後まで諦めない、走り抜く姿勢」は見せたいと話した。それを大事にしつつ、攻守のバランスの質を高めてエネルギーのロスを減らし、勝負どころで力が出せるチームにしたい。
─昨季の昇格プレーオフ決勝は“残り3分での失点”で目標を達成できなかった。
残った選手は悔しさを口にし、「何かを変えないといけない」というマインドでいる。新しい指導陣と一緒に、必要な変化に前向きに取り組んでくれている。
─自身も立場が大きく変わって今季に臨む。
スカウトとして19年間、「いい選手とは何か」を考えてきた。今はそれをベースに、良いグループ、良いチーム、良い組織とは─と、考える領域が広がっている。開幕戦がお披露目の場だが、チームはシーズンを通して成長するし、編成も手を打っていく。大事なのは最後。僕が信頼する選手やスタッフ、それぞれのエッセンスがどういう形で調和されるのか、どんな花が咲くのか楽しみにしている。
とまる・よしたか 群馬県出身。前橋南高、仙台大でプレー。2006年にサガン鳥栖でスカウトになって以来、ベガルタ仙台、セレッソ大阪でも選手の発掘、育成に携わった。昨年12月、山雅のSDを2季務めた下條佳明氏(70)の後任に就いた。