美術家・松澤宥さんの思考に迫る 60年前の架空の展覧会オマージュ 松本で2月22日まで

「目に見えないものを見る」という美術鑑賞を提唱した下諏訪町出身の美術家・松澤宥(ゆたか)さん(1922~2006年)が、60年前に催した“念”で作品を募る架空の展覧会を再現し、その出展者の“念の元”となった資料を見せるユニークな展示会が2月22日まで、松本市大手1の美術・芸術大予備校「マツモトアートセンター」で開かれている。
「作品はあなたの手元に置いておいて、作品が発する無形のものを会場まで届けてください」
同センター代表の北澤一伯(かずのり)さん(75)は昨年12月、松澤さんが開いた「荒野におけるアンデパンダン’64展」へのオマージュ(敬意)として、同様の架空の展覧会を企画した。
「荒野における─」と同じ「展示会場は七島八島(下諏訪町)、会期は12月3~9日」との設定で、自身のフェイスブックで作品の出展者を募ったところ、会期中に国内外のアーティストや美術関係者、会社員など9人から「作品を送った」と連絡があった。
北澤さんと出展者の間で交わされた、目に見えないコミュニケーションが架空の展覧会の醍醐味(だいごみ)だが、「美術=物質」「美術=目で見る」などの常識を超え、松澤さんが創始した「観念美術」を広く知ってもらい、自由に感じてほしいと今回、出展者の念の元となった資料を一般に公開することにした。
会場には北澤さんの依頼で出展者から送られてきた、「ピリオドが一つ打たれただけの白い紙」やオブジェ、映像などが並ぶ。北澤さんは「『荒野における─』の自由さは、今の時代にこそ響くと感じた」としている。
午後1~7時(22日は10時)。入場無料。同センターTEL0263・33・5511