【農トピックス】#11 雑草対策ロボ

業種を超えるビジネスモデル

農業ベンチャー、ハタケホットケ(塩尻市大門八番町)が内閣官房主催のコンテスト「イチBiz(ビズ)アワード」で、本年度の最優秀賞に選ばれた。水田の雑草対策ロボット、ミズニゴールで展開するビジネスモデルが、農業の枠を超えて評価された。
ミズニゴールは、自動で田んぼを動き回る三輪ロボット。ブラシで泥をまきあげて雑草に当たる日光を遮り、芽もかいてしまおうという仕掛けだ。
一方、イチBizアワードは、GPSのような地理空間情報を活用したビジネスアイデアのコンテスト。3回目の今回は、全国の研究機関や企業から医療や教育、運送などでの提案が集まった。
東京での最終選考は1月31日。同社の日吉有為代表(51)は受賞を喜ぶとともに「そんなところまで見てくれるんだ」と驚いたという。審査員の庄司昌彦・武蔵大教授(情報社会学)が「土や米の売り方についてもよく考えられている」とコメント。ロボットの機能以外もポイントに挙げた。
同社はミズニゴールの改良を進めながら、雑草の生えにくい土作りを探ったり、割高な有機米の販路開拓を進めたりしている。農薬に頼らない雑草対策から派生していく取り組みが、新たな価値を創出するビジネスとして評価された。
審査員がロボットだけでなく、その先まで意識してくれることは、むしろ「本望」ともいえる。2021年、東京育ちの日吉さんらが移住してまで設立したのは、テクノロジーを活用して安心安全な国産の食べ物を|という思いからだった。
栽培にとどまらない視野は異業種の関心を呼び込む。23年秋、ジャパンモビリティショーに参加し、トヨタ自動車ら大手メーカー首脳から質問攻めを受けた。別事業の獣害対策プロジェクト「シカニゲール」では、鹿の衝突事故に悩む鉄道会社との連携が始まった。
業種をまたいだアイデアのやりとりが農業の在り方を変える。そんな交流のハブが信州の真ん中にできつつあるのかもしれない。