【醸し人】#23 井筒ワイン 醸造責任者・野田森さん

ブドウの特性生かし味を追求

15社、1高校のワイン醸造所が点在するワイン産地、塩尻市。その中の老舗の一つ、井筒ワイン(宗賀桔梗ケ原)は、テーブルワインから世界に通じる銘酒まで、全ての品質を追求。醸造に携わり約30年の野田森(しん)さん(54)は、高校時代に見た米国・ソノマバレーの広大なブドウ畑に魅せられこの道を志した。
栽培から醸造まで携わり、それぞれのブドウの特性を生かしたワイン造りを目指す。品種で販売する銘柄は13種類。新たにセミヨンとソービニヨン・ブランをブレンドした白ワインにも挑戦、24年の日本ワインコンクールで金賞を受けた。
京都市出身。高校2年の夏、米国カリフォルニア州のワイン銘醸地・ソノマバレーに滞在した。「ワイナリー」という仕事があることを初めて知り、衝撃を受けたという。山梨大で醸造を学び、同社に就職した。
当初は外国産に多い重厚なワインをイメージして醸したが、繊細な塩尻産ブドウは思うような風味にならなかったという。「醸造家の考えを押し付けるのではなく、ブドウが持つ特性を出すのが大切なんだ」。醸造方法や使用する酵母などブドウを見て判断。技術と知識の習得を積み重ね塩尻ワインの可能性を広げてきた。
自社畑は28ヘクタール。「岩垂原」など地区ごとに醸造する試みも。野田さんは「その年に結果がでなくても、翌年にまた挑戦できる。天候など自分の能力以外の課題をどう克服するかもやりがい」とし、「ワインで塩尻市にも貢献できたら」と願う。
フルートが趣味で地元のオーケストラに所属。仲間と演奏する緊張感とハーモニーの広がりが好きという。複雑で華やかなオーケストラの音色とそれに似たワインの味への追求は、これからも続く。
【沿革】
いづつわいん1933(昭和8)年、創業。地域特産のナイアガラ、コンコード種に加え、メルロー、シャルドネなどの欧州系品種にもいち早く着手。国内外の品評会で数多くの金賞を受賞。契約農家と自社畑のブドウを年間約800トン醸造している。

【野田さんおすすめこの1本】
2023ソーヴィニヨン・ブラン
(720ミリリットル2550円)

【相性のいい料理】
鶏肉のソテー(塩やクリーム系の味付け)

【連絡先】
井筒ワインTEL52・0174