
「陸上競技の五輪メダリストから、走り方を教わりませんか」
安曇野市内でトレーニングジムを2店舗経営する「ZERO(ゼロ)」(豊科田沢)は、2008年北京五輪陸上競技の400メートルリレーで銀メダルを獲得した塚原直貴さん(39、岡谷市出身)を講師に、「ランニング講習会」を毎月開いている。
元陸上選手で、柔道整復師の同社社長、丸山主税さん(47)と、塚原さんの「走り」を通じた体の効率的な使い方や正しい動き方などについての考え方が一致。地域貢献や地元のスポーツ振興などを目的に、講習会を開くことにした。
近いうちに講習会を発展させ、塚原さんの「走りのメソッド」を学べる「スプリントクラブ」をつくり、ゆくゆくは地元スポーツの活性化などを担うアカデミーの開校を目指している。
地元スポーツ活性や育成も視野
現在、スポーツイベントの企画運営などをする「ザ・ファースト」(東京)に所属する塚原直貴さんを講師に招いた、3回目の講習会は10日、安曇野市豊科高家のANCアリーナで開催。この回は「走り方リセット講習会」と銘打った。
約20人が参加。歩きながら上体を前屈させ、尻や太ももの裏の筋肉を伸ばすストレッチなど、最初から「塚原流」の体の動かし方でウオーミングアップした。
膝を外向きにして旋回させたり、がに股になって腰を落とし、両手を挙げるという不安定な姿勢で歩いたりするなど、ユニークかつハードなトレーニング内容をこなした。
塚原さんがその都度、今やっている運動で体のどの部位を鍛えるのか、何を目的にしているかなどを、自身の体を使いながら分かりやすく解説。参加者は「へー」などと声を上げ納得していた。
参加者の大谷拓哉さん(57、松本市)は「五輪選手に直接教えてもらえてありがたい。年齢に関係なく、体全体の動かし方などを学べるのがいい」と満足そうだった。
この日は、陸上競技のマスターズ大会女子三段跳びで年代別の世界記録を保持する大日向暁子さん(75、同市)やベンチプレス競技の元世界王者、鈴木佑輔さん(40、安曇野市)らも参加。
大日向さんは「塚原さんの美しい、無駄のない動きを見るだけでも価値があり、勉強になる」。鈴木さんは「塚原さんは体の動かし方のスペシャリスト。陸上もベンチプレスもベースは一緒。新しい刺激をもらって、自分の競技に生かしたい」と言って汗を拭った。
ZEROは2022年9月、建て替え工事に入る前の信州スカイパーク陸上競技場(松本市神林)で「ナイター運動会」を開催した。そこに塚原さんがゲスト参加。社長の丸山主税さんと初めて出会った。
二人は「陸上競技おたく」同士と分かり、意気投合。また、塚原さんが現役時代ずっと苦しみ続けた両足のアキレス腱痛も、柔道整復師でもある丸山さんの施術で改善した。信頼関係が深まると同時に、五輪選手の経験と医療的専門知識をかけ合わせて地域に還元しようと、講習会開催に至った。
今後、講習会に複数回参加した人を対象に、「塚原メソッド」を集中的に教える「スプリントクラブ」を開設。ZEROには、陸上競技の競歩で世界選手権に出場した原義美さん(56)もおり、彼らを講師にした「スポーツのアカデミー」開校も視野に入れる。
塚原さんは「自分の競技人生で学んだことを多くの人に伝えるのが、今の使命」と意気込む。丸山さんは「『走る』ことはあらゆるスポーツの基本。こうした取り組みを通じて地元選手に強くなってもらい、地域にも貢献できたら」と将来を見据える。
次回の講習会は3月17日午後5時半から、ANCアリーナで開く。問い合わせは、ZERO田沢店TEL0263・50・5825