
地元の人の居場所に―。15日、辰野町小野にオープンした「たまやどり」。飼育環境や飼料にこだわる養鶏所のオーナーや、無農薬・無肥料で米を栽培する人など、同町のほか塩尻市、朝日村などでこだわりの生活をする30~60代の男女6人が運営する。
餅、おにぎりなどの製造卸・出店をする「こめはなや」の敷地内にある、築約150年の古民家を有効利用。周辺は高齢者が多く、近くに店もない。自然食品などを置けば、買い物難民を救うことにもつながる。
たまやどりは「魂が宿る」と「卵」にちなんで名付けた。ふらっと立ち寄ってお茶を飲んだり、のんびり話したり。加工食品のワークショップも計画、「多くの人の“たま”り場に」と仲間たちが張り切る。
地域のたまり場 買い物支援も
辰野町小野にオープンした、地域の居場所「たまやどり」を運営するグループは、「あいももプロジェクト」だ。こめはなや店主の小澤尚子さん、しばた養鶏(塩尻市北小野)オーナーの柴田勝さん(49)、松澤有里子さん(辰野町小野)、西尾真由美さん(朝日村西洗馬)、山下実紗さん(辰野町小野)、花田みゆきさん(伊那市)がメンバーだ。柴田さんが代表を務める。
「農家のお菓子とご飯を食べられる」をモットーにした「こめはなや」。現在、飲食店の営業はしていないが、小澤さんは「いろいろ頑張ってきた場所を何とかしたい」と常々思っていたという。柴田さんが敷地内にある古民家を借りることになり、「卵の専門店を」という話が浮上した。「1人では無理だが、みんなで力を合わせればできる。人が集える場所をつくろう」
昨年8月に準備を始め、9月、あいももプロジェクトが発足した。無農薬、無肥料で米作りをする小澤さん、西尾さん。平飼いで、古米や野菜くずを餌にするなど健康的な鶏の飼育環境を整える柴田さん。それを手伝う松澤さん。自然栽培で田畑を耕し、しょうゆの搾り師としても活動する花田さん。新規就農を目指す山下さん―。
いずれもこだわりの生産者だったり、自給自足を目指したりする人たちだ。小澤さん以外は大阪府、千葉県などからの移住者だ。過疎化する地域を盛り上げたい気持ちも強い。
そんな6人が運営するたまやどりは、「耕す・作る・集う」がコンセプトという。近所の人がふらっと立ち寄れる縁側のような場所にと、テーブルなどを置き、セルフサービスでお茶を飲めるようにした。
近くには買い物できる場所があまりないので、買い物弱者をつくらないようにと、米や卵、無添加の自然食品などを販売する。コーヒー、パン、洗剤なども扱う。「体に優しい品を広めたい」と、みそ、しょうゆ造りのワークショップも計画している。
あいももプロジェクトは寄付や助成金で運営されている。建物には、スロープを付ける、入り口のひさしを改修する―といった計画もあって、現在クラウドファンディングの準備中だ。
「子どもやお年寄りなど、いろいろな世代に利用してもらえればいい。一度出かけてみてほしい」と柴田さん。地域の人のたまり場。支え合い、助け合う拠点。互いの凸凹を埋め合える場|。いろいろな人が関わり、育てていくたまやどりは、さまざまな可能性を含んでいる。
木~土曜午前10時~午後5時営業。