「木」を通じ地域の未来に貢献―森林整備などに取り組む合同会社「いちろく」

塩尻市長畝の森林整備などに取り組む合同会社「いちろく」(同市塩尻町)。メンバーはいずれも塩尻町在住の島田明治さん(82)、塩尻市長を5期務めた小口利幸さん(73)、同市議会議員の上條元康さん(60)。「木」を通じて地域の未来に貢献するため力を合わせている。

現在の仕事場は、長畝の私有林。以前はマツやカラマツが生い茂り、陽光も差さないほど、うっそうとしていたという一帯を数年計画で整備する。
「これからこの木を切るよ」と、合図する小口さん。直径約60センチ、高さ約25メートルのマツをチェーンソーで切る。爆音と共に、木の粉が舞い上がり、木が倒れると大きな地響きが。その迫力に圧倒された。
木材は主に信州・Fパワープロジェクトのバイオマス発電所(片丘)に供給。荒れた里山や森林の木を切り、エネルギー源に転換、循環型社会に貢献するのが目的だ。
活動は週に3~4日で、年間約250トンの木材を同発電所に供給するほか、良質な木は地元の木材会社に出荷。松くい虫の被害木駆除などにも取り組む。

「いちろく」は、上條さんが代表で唯一の社員として2021年に設立。社名は、「木」の字にそれぞれ「一」と「六」を付け加えると「未来」になることから、木によって社会の未来に貢献する意味を込めた。
主旨に賛同した島田さんと小口さんも仲間に。指導役の島田さんは定年退職後、独学で特殊伐採の技術を身に付け林業の道に。20年以上、地元の神社や別荘地などで活躍してきた。
小口さんは幼い頃から里山に親しみ、社会人になってからも、休日は祖父と里山整備に取り組んだ。市長在任中に、県と市、旧征矢野建材などで県産材を活用するプロジェクト「信州F・パワープロジェクト」を発足させ、大規模な製材工場と木質バイオマス発電所の建設に携わった。
大きな期待が寄せられたプロジェクトだったが、発電所の燃料チップ不足などが要因で経営が悪化。現在は綿半グループが引き継いでいる。
そうした現状を踏まえた上で小口さんは、「『森林再生のために100年に1回のチャンス』と、言い続けてきた。そんな自分が何もしないのは許されない」と強い決意を見せる。22年9月の退任後から、林業に携わっている。
林業初挑戦の上條さんの志の下に、ベテランの島田さん、30代からチェーンソーを使いこなす小口さんが加わり、3人がそれぞれの役割をこなしている。
島田さんは「80歳を過ぎても自然の中で仕事ができるのが幸せ」、小口さんは「仕事後のビールは最高。周囲に喜ばれるのがやりがい」と笑顔を見せる。
上條さんは「技術も志も高い先輩から学びつつ、将来のために地域の自然を残していきたい」と力を込めた。